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時を越えて世界を変える  作者: 一ノ瀬 和人
6章 化学研究所
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今後の対策

「まさかあんなことになっているとは……」


 そう言いながら俺は旅館のロビーの椅子に座った。

 あれから俺等は神山博士から一通りの事情は聞き、その後沙耶達と合流して一緒に見学をに戻った。

 その間、俺と美雪と真奈は終始無言である。

 相変わらず沙耶と友梨亜は騒いでいたて神山博士もそれに付き合って騒いでいた。

 あの時の光景が嘘のようである。

 その後、見学を終え日も暮れた所で今日の見学はお開きとなり、旅館に戻ってきている。

 現在は女性陣は大浴場に行ってお風呂に入っている所だと思う。

 

 俺は男湯を先に出てこうしてロビーに座って今日のことを考えている。

 

「雄二よ。考え事か?」


 ふと横を見るとそこにはお風呂上がりの真奈がフルーツ牛乳を2本持ちこちらに向かってきていた。

 

「あぁ。神山博士のことを考えていたんだ」


「あの研究のことか」


 真奈も察したようで俺の前の椅子に座り、フルーツ牛乳を1本俺の前に出した。

 これは俺にも1本くれるということなのだろうか?

 

「これはお主の分じゃ」



「ありがとうな」


 フルーツ牛乳のふたを開けて俺はビンに口をつけて一口飲む。

 前を見ると真奈もふたを取り、口をつけて飲んでいた。

 

「雄二よ。童はまだ信じられないのじゃ。北海道であんな研究が行われていたとは」


「俺も同じだよ。こんな研究がここで行われていたなんて」


 俺と真奈は2人で嘆息していた。


「お主はあの研究をどう思う?」


「どう思うって言われても……」


 俺にはいい案が思いつかない。

 あそこまで大きい研究だと、国家規模のものになるだろう。

 さすがに一般人の俺にはそんなことを止めるのは無理である。

 

「確かあのウイルス自体はどこで発見されたかもわからないんだったな」


「そうじゃ。博士の話だと元々この研究機関で研究されていたものらしいからのう」


 神山博士の話だとどうやらこのウイルスは外部からある時持ち込まれたらしい。

 そしてあの研究所でウイルスの抗体について研究を行っているらしい。

 しかしそのために死刑囚を使うなど本当にきみが悪い。

 政府の要人たちは一体何を考えているのだろうか。

 

「本当にあのウイルスが流出したら、世界中が大変なことになるぞ」


「童もそう思っておる。だが雄二よ、あのウイルスは確実に流出するのだろう」


 そう、あのウイルスは100%流出してしまう。

 それは今までの経験から俺が知っていることだ。

 

「とりあえず武器が早急に必要になってくる。銃火器や、刀があった方がいい」


「それは童に任せておけ。父や母が使っていたルートを使って取り寄せてやるのじゃ」


 そんなことを言う真奈はどこかあくどい笑みを浮かべていた。

 全く、俺はこいつだけは絶対に敵にはしたくないな。

 

「それとあのウイルスの発生先も調べる必要があるわね」


 横を振り返るといつの間にか美雪が俺の横に来て座っていた。

 一体いつの間に来たんだろうか。

 というか沙耶達は置いて行ったのか?

 

「沙耶ちゃん達はまだお風呂にいるよ。それよりもあのウイルスがどこで見つかって何の目的で日本に来たのかも調べないと」


 美雪も妙にやる気だった。

 ただ、どうやってそのことを調べるんだ?


「有栖川さんって人に聞いてみるの。その人ならこの謎を知っているかもしれない」


 そう言えば、神山博士はしきりに有栖川の名前を出していたな。

 確かに聞いてみる価値があるのかもしれない。

 

「そうと決まったら善は急げじゃ。あっちに戻り次第、武器の補充と有栖川への連絡を取ってみるように童がはからおう」


「真奈1人に負担をかけるようで申しわけないが頼む」


「うぬ。任せるのじゃ」


「そういい、真奈は胸を張って俺の言葉に応えた」


 こうして、収穫の多かった俺等の北海道の化学研究所の視察は終わった。

 帰りの飛行機では皆疲れていたのかとても静かだった。

 今回の研究所の視察では収穫が多かったが、また謎も深まってしまった。

 ウイルスはそもそもどこで発見されたのか?

 そして有栖川とは何なのか?

 色々な収穫と疑問を胸に、俺等は北海道の地を後にした。


ご覧いただきありがとうございます


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