見せたいもの
「岬君、ちょっといいかい?」
お昼を食べる前に、俺は神山博士に呼ばれた。
俺達は現在、食堂の食券販売機の所で並んでいる所だ。
沙耶と友梨亜はもう食券を買って今は食堂の列に並んでいる。
「君に見せたいものがあるんだ。悪いがちょっとこっちに来てもらえるかな?」
「分かりました。それは俺だけじゃないとダメなんですか?」
「あぁ。できれば君だけにこれは見てほしい」
成る程。
俺にしか見せられないか。
どうやら神山博士が見せてくれるのは他の人は見てはいけないものらしい。
多分それは俺にとっては重要なことだろう。
「それは私も言っていいわよね」
「童も行くぞ」
いつの間にか食券販売機の列から離れて真奈と美雪がこちらに来ていた。
どうやら俺と神山博士の話を聞いていたのだろう。
しかし、美雪はいいが果たして真奈はこの話をきくべきなのだろうか?
「しかし、有栖川君の話からはは岬君しか話が通じないと聞いたのだが……」
「私もあの惨劇をくぐりぬけてきたのよ。私にも聞く権利はあるわ」
美雪は神山博士に真剣なまなざしを向けている。
美雪も俺と一緒にアウトブレークを生き残った1人である。
確かに事情や原因も知りたいのだろう。
「童のSP達が他の場所に行くと童を守るものがいなくなるじゃろう。だから2人が行くのなら童も行くぞ」
「高宮のお嬢さんもか……分かりました。あなた達も案内いたしましょう」
何かに観念したかのように神山博士は天井を見上げた。
「ただ、覚悟をしてほしい。今私が研究していることはこの国だけじゃなくこの世界を揺るがすものかもしれない」
「分かっています。俺等はその被害を最小限にするためにこの世界に来たのだから」
そう言いながら神山博士はこちらを見て微笑むと踵を返して食堂の外のドアへ向かう。
「ついてきたまえ。君達が見たいものがこの先にはある」
そういい、俺等は神山博士の後ろについて行った。
この先、俺等見せたいものが何なのか
この時の俺等にはそのことが大体想像できていた。
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