2人の約束
「確かに真奈の言う通りだ。これ以上の旅館はどこにもないな」
「そうであろう。童は北海道に来た時は必ずここに来ておる」
現在、俺と真奈は旅館のロビーにある机に向かい合って座っている。
友梨亜と沙耶は2人でさっき繁華街の方に向かっていった。
そして美雪はその付添である。
初めは真奈も行くはずだったのだが、疲れたから休みたいということで真奈は残ることになり、俺はその護衛だ。
美雪はかなり不服そうだったが、もともと真奈専属のSPなのだからこればかりはしょうがない。
「しかしな、まさか真奈が残るとは思わなかったよ」
「そんな意外か? 童が表に行かないのが?」
「あぁ、真奈なら沙耶や友梨亜が行くなら一緒に行くと思っていたよ」
これは正直な感想である。
真奈は基本あの2人、特に友梨亜とよく行動しているため行動するんじゃないかなと思っていた。
「童だってたまには1人でいたい時ぐらいあるぞ。それに雄二に聞きたいこともあるんじゃ」
「俺に?」
こいつが聞きたいことか。
一体何なんだろうな。
「お主の過去のことじゃ? お主はまだ童に隠しておることがあるじゃろう」
「何のことだか俺には分からないな。俺は美雪と真奈には話せることは全て話しているぞ」
「じゃあ、お主が話せないことについてはどうじゃ……例えば美雪と会う前の世界のこととかどうじゃ?」
真奈の表情はしてやったりとした表情をしていた。
なんと憎たらしい表情なのだろう。
こいつは俺のことをどこまで見抜いているのか。
「お主はまだ何か色々抱えているのだろう。どうじゃここで話してみないか?」
「俺が抱えていることなんてないよ」
「じゃあ、話して見る気はないか? お主が初めてこのバイオハザードにあった時の話を」
「それは……」
さすがにこれだけは俺の口からは言えないと思う。
初めて俺があったバイオハザード。
それは人の悪しき部分が如実に表れていた酷い世界だった。
今でも俺はこのことについて誰にも口にしていない。
人の本性程醜いものはない。
俺はこの時そう思った。
「大丈夫じゃ。覚悟はできておる。お主をここまでにさせた理由を童は聞きたいのじゃ」
「分かった。それは教える。ただこの化学研究所の視察が終わってからでいいか? 俺にも心の準備をさせてくれ」
「了解じゃ。その時は素直に話すんじゃぞ」
そう言い、真奈はこちらを向きうなずいた。
どうやら俺は真奈達には隠し事ができそうもないんだな。
俺はこの時そう思っていた。
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