対峙
「やぁ、安城さん。来てくれて嬉しいよ」
「私に何の用? 由良」
私の目の前に立っている金髪の男、由良に対して私は態度を崩さない。
少しでも弱い所を見せればつけ込んでくるのがこの由良という男である。
なので少しでも隙を見せないためにも無表情で由良に話しかける。
「酷いなぁ。俺のことは由良先輩じゃないの? 昔みたいにそう呼んでよ」
こいつが人によって態度を変えることは百も承知だ。
終始笑顔で笑っている由良が不気味に感じる。
「早く言いなさいよ。これ以上待たせるようなら私は帰るわ」
「連れないこと言うなよ。君に話したかったことは最近君とよくいる岬君の噂のことだ」
私は前と同じような台詞を聞いた。
あの時の私と同じようなことを今言われている。
「あの噂は隣のクラスの遠野さんが流しているらしいんだ」
「それがどうしたの? 」
「どうしたって……安城さんはそんな噂を流した本人を憎いとは思わないのかい? 第一自分の好きな人をこんなにも酷い目に合わせているのだから」
由良は見た目は冷静だが内心焦っているのがわかる。
いつもは冷静に淡々と話すのだが、
「思わないわ。当の本人がまったく困ったと思っていないもの」
「でも、自分の好きな人が1人で孤独になっているんだよ。少しでも改善して自分のことをアピールしようとか……」
「雄二は、1人じゃないわ、私がいるもの」
私は由良の言葉にくってかかる。
「それに、沙耶や真奈、友梨亜もいる。雄二は1人じゃない]
私がそういうと由良は苦虫を噛み締めた表情になる
しかし、その顔にはまだ笑顔のさわやかな表情が張り付いている。
「そうか、そうなんですか。でもこのままだと岬君も危ないかもしれないな」
「それはどういう意味?」
由良は私の言葉を聞いてにやりと笑う。
私を呼び出すだけでは飽き足らずこいつは雄二にまで危害を加えようとしているの。
「さっきさ、いや、本当にさっき見ただけんだけど……雄二君が最近調子のっているからって遠野さんが男子10人位呼び出してリンチをしようとしているって話を偶然聞いちゃったんだよね。でも、今からチェーンメールでも流せばきっと防げるんじゃないのかな?」
「由良……あなたって人は……」
こいつはどこまで最悪なやつなのだろう。
雄二を半殺しにされたくなければ、悪事に加担しろと言うなんて
こいつはどれだけ下種なんだ。
「どうしますか? 安城さん?」
「私は……」
「なるほどな。下の騒ぎはお主のせいであったか」
いつの間にか屋上のドアが開いており、そこには真奈がこちらに向かって歩いてきていた。
「お前らは誰だ!!」
「誰でもよかろう? それよりお主のたくらみはどうやら不発に終わったぞ」
「たくらみって……あいつら相手できるなんてことは……」
由良ははっとした顔をするがそれでも遅い。
確実にたくらんだのが由良だとこの瞬間はっきりした。
「まぁどうかは知らんが雄二が全員をのしておったぞ。それにしても雄二はすごいの。金属バットを持ってきた奴らでさえ、手も足もでんかったからな」
そういい真奈は「さすがは童のSPじゃな」とか言ってて笑っていた。
10人だって普通はきついというのに金属バットを持ったやつをまで相手にするなんて……。
雄二のポテンシャルは図り知れない。
一体彼はどれだけ強いのだろう。
「それで、雄二は?」
「雄二なら保健室へ美優が連れて行ったぞ」
雄二が美優と……。
それは大問題ね。
きっと今頃保健室で美優の胸に抱かれて……
ダメね。
そんなことを考えていたらこちらがむかむかしてきた。
「おい、お前ら……」
後ろの方を向くと由良が青ざめた顔でこちらを見ていた、
全ての作戦が失敗したのでこんな顔をしているのだろう。
みていて哀れにしか思えない。
「由良、次私達に手を出したらこんなもんじゃ済まないわよ」
私は由良にそういい、屋上の扉を目指す。
「いいのか? もし奴がこちらに危害を加えてきたら……」
「その時は私が何とかする。それに真奈、あなたも何かするでしょう」
「まぁ、そうするがな」
「ならいいじゃない」
そう真奈と話しながら私達は保健室に向かって走って向かった。
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次回の雄二のお話で4章最後になります。
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