悪夢
今回はグロテスクな表現を含みます
苦手な方はブラウザバックしてください
私は今何が起こっているのかわからない。
目の前で人が人を食べている。
そんなことがあっていいのだろうか?
ことの発端は放送室から流れた校内放送だった。
そこで緊急避難の号令が出た後、急に先生の断末魔と肉の引きちぎられる音が学内放送で流れた。
その瞬間校内は一瞬でパニックになる。
急いで学校から出ようとする生徒で辺りがごった返し、廊下には人が群れのようにいる。
私は友人の里奈と行動していた所、幸い由良と合流することができ私たちは7人グループで安全な場所を探していた。
「それにしても人が人を食うなんてな。どこかのB級映画かよ」
「由良くん見てよ。数学の上村があっちでゾンビに囲まれてるぜ」
私達の数m先には数学教師の上村先生がいた。
いつも温和で生徒受けがいい先生だった気がする。
「由良、お前ら助けてくれ」
「物事には順序があるだろう、上村先生。助けて下さい、お願いしますは?」
由良のセリフに一瞬苦い顔をした先生だったがこちらに頭を擦り付けて懇願してきた。
「お願いします。助けて下さい」
私はこの時驚いた。
人間は生きるためには本当になんだってやることに。
「や・だ・よ……それにそんなに囲まれてたら助けられないって」
「由良……お前、俺のことを騙したのか」
「騙していないですよ。それよりも先生、前気付いてます?」
いつの間にか接近していた感染者達が上村先生の両肩を掴む。
「やめっ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁl」
7体もの感染者に肢体を引きちぎられた上村先生は一瞬ビクンと体を動かすと絶命してしまった
「いつもは威勢がいいだけなのにな。 見ろよ体がぴくぴくしてるぜ。まるで魚みたいだ」
「由良君それは違うよ。魚だってあんな変な動きしないって」
それもそうかと言って由良と上級生の先輩は笑っている。
私の数m先で数学教師の上村先生が肢体を引きちぎられ、それを感染者達がむさぼり食べていた。
狂ってる。
由良にしてもこの隣の男にしても考えることが尋常じゃない。
普通は生存者がいたら助けるべきではないのか?
「それよりこっちの階段だ。ここからなら旧校舎の方へ逃げれるぞ」
由良が差したのは上の階へとつながる階段だ。
確かにもう1階登れば旧校舎にいける渡り廊下がある。
確かにそこまでいけばなんとかなるかもしれない。
「こっちだ」
そういい私達は由良の後を着いて行く。
「由良君まずいよ。後ろからゾンビが押し寄せてきてるから追いつかれるよ」
由良は短く舌打ちすると、里奈の方を見ていた。
何をするのかと思った次の瞬間、由良は里奈をゾンビがいる階段の踊り場につきとばした。
その場で何が起こったかわからない里奈は悲鳴をあげる暇もなく、後ろから来た10体以上もの感染者に体中の肉を引きちぎられ、絶命した。
里奈……。
その瞬間私は絶句すると共に、目尻から涙が出ていた。
目の前にいて、さっきまで一緒に逃げようと話していた女の子がこんなあっけなく逝ってしまうなんて思わなかった。
「なんで……なんで里奈を殺したのよ」
渡り廊下を渡り旧校舎に入った時、私は由良に尋ねた。
「あれは不慮の事故だったんだよ」
「不慮の事故だって……嘘つき。貴方が里奈を殺したのよ」
「違うな殺したのはゾンビ共だ。俺はちょっと彼女と体がぶつかっただけだよ」
未だに悪びれる気がない由良に私は絶望していた。
なんで私は今までこの人の言うことを聞いていたのだろう。
あの時あの人と縁を切っていればこんなことにはなっていなかったのに。
「私はもう貴方達とは行かないわ」
「美雪、連れないこと言うなよ。俺たち恋人同士じゃないかよ」
私に触れようとした由良の手を私は払う。
「ふざけないであんなことしておいて。もう貴方となんて恋人でもなんでもないわ」
「そうか……残念だ」
そういうと由良は私を旧校舎の階段の踊り場に向けて蹴り飛ばした。
その時私は何が起こったか全く把握していなかった。
ただ気付くと階段の踊り場の床に背中を打ちつけその場で止まっていた。
体中が痛い。
どうやら背中を打ったみたいだ。
「美雪、残念だ。今ならまだ考えを変えることができるがどうだ?一緒にこないか?」
「嫌よ。貴方見たいなのといるのなら死んだ方がましよ」
「そうか。じゃあゾンビの餌にでもなるんだな」
そういい私を一瞥すると由良達は廊下の方に去って行った。
私はすぐさま辺りを見回す。
下の階から3体上の階段の方から4体の感染者が私めがけて向かってくる。。
「もう、疲れたわ」
この時私は昔のことを思い出していた。
由良にそそのかされて退学に追い込んでしまった遠野さんのこと、そして階段から落ちて感染者の餌食になってしまった里奈のこと。
これは私への天罰だったんだ。
遠野さんを退学に追い込み、里奈を死に追いやってしまった私の。
ごめんね遠野さん、里奈。
私は心の中で謝り、ゆっくり目を瞑る。
そして来るべき痛みに備えていた。
しかし一向に体に痛みがこない。
その直後、何発かの乾いた銃声の音が聞こえる。
私はゆっくり目を開くと、そこには連射式の銃を持つ1人の男の子が佇んでいた。
「みゆ……安城さん無事か? 何処かあいつらに噛まれたりはしてないよな?」
「えぇ、大丈夫。ただ、階段を背中から落ちたから体がしびれて動けないわ。」
「はぁ? どうしたらそんな状況に……そうか由良のやつか」
私を助けてくれた男の子は冴えないぼさぼさの髪をして、いつも眠そうにしている少年。
この男の子は私のクラスにいた男子で名前は……
「雄二!!」
下の階段から声が聞こえたと思うと、2人の女性が上がってきた。
片方はアイドル顔のいつも元気な立石美優。
発育のいい胸をみれば一目瞭然だった。
今でもどうやればあんな胸に育つの不思議である。
もう1人の丸メガネをかけた、小さい子供は沙耶だった。
私は沙耶とはこの時初対面になる。
「雄二は何であんな無茶するのかな? あそこで雄二が食べられちゃったらどうするつもりだったの」
「ははは。ごめん美優。次はもう少し慎重にやるよ」
「でもよかったです。お兄ちゃんが無事で」
そういい、雄二に対して沙耶は安堵の表情を浮かべる。
「いや、安心できないぞ。今の銃声で感染者がまたこっちにきてる」
確かに上からはまた2体の感染者がこちらに向かってくる
ぼやぼやしているとまた囲まれてしまうかもしれない
「とりあえず職員室まで行こう。俺が前に行くから美優は安城さんを頼む。沙耶は後方と左右をに注意してくれ」
そういうと私は立石さんの肩を借りて職員室まで急いだ。
それからはあっという間だった。
雄二達と合流し職員室でマイクロバスの鍵を取り、学校を脱出した。
その後は色々な所を転々としながら最終的にあの島につき、皆で暮らし、そして……
「安城さん、ここです」
ふと前を見ると何時の間にか屋上に着いていた。
屋上の扉を開けるとそこには由良が1人で佇んでいた。
大丈夫。
私は昔の私ではないのだ。
今の私には沙耶や真奈やゆりあ、そして何よりも雄二がいる。
私は負けない。
心の中に強い決意を秘め、私は由良と対峙した。
ご覧いただきありがとうございます
感想をいただけるとうれしいです。
この時は感染者のことを美雪達は『感染者』、由良達は『ゾンビ』と表現しています。
人によって言い方が違うようにしました。
後、昨日の件につきましては活動報告をご覧ください。
申しわけありません。




