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時を越えて世界を変える  作者: 一ノ瀬 和人
3章 すれ違い
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未来は変えられる

 あの後友梨亜を止めた後、俺は真奈に散々怒られた。

 「なっとらん」とか「なぜ迅速に助けんかった」とか「これがアウトブレークならどうなってたことか」とか美雪がお茶を持ってくるまで散々言われた。

 で、今はテーブルを4人で囲んでお茶をしながらケーキを食べている。

 ちなみに、友梨亜はショートケーキで美雪はチーズケーキ、真奈はモンブランで俺はチョコレートケーキである。

 真奈にはケーキを出しても機嫌が直らなかったので、俺のチョコレートケーキを半分上げたら機嫌が元通りになった。

 おかげで真奈が機嫌が悪い時は、ケーキを渡せばいいことが分かった。

 それだけでケーキを半分渡した買いがあるってもんだ。

 

「それでそれで、お兄ちゃんの彼女さんはどっちなのかな?」


 こいついきなり爆弾を落としやがった。

 それは触れちゃいけない所だろうが。

 みろ、真奈と美雪が今にらみ合ってるだろうが。

 

「雄二は童の所有物なのだから童のものに決まっている」


 こいつもいきなりかましてくれる。

 見ろ。

 友梨亜が真奈の方を向いてびっくりしてるぞ。


「いいえ、真奈。雄二と私は蜜月な時を2人で歩んできたのだから私が彼女に決まってるわ」

 

 美雪、お前も言っていることは大体あってるが、こんなところで爆弾を落とさないでくれ。

 今度は友梨亜が絶句をしていた。

 

「それより、2人とも友梨亜に話すことがあったんじゃないのか?」


 話が脱線したので元に戻す。

 と言うかこれ以上この話題で行くと俺が消耗する。

 主に精神的な意味で。

 

「そうじゃな。雄二の妹と言ったな。童は高宮真奈と言う。雄二には色々迷惑をかけられておる」


 おい!! それってどういうことだよ。

 お前に迷惑をかけられることはあっても、お前に迷惑を変えケタことなんてないよ。

 

「不肖な兄ですいません。これでもお兄ちゃん、少しはいい所があるはずなので宜しくお願いします」


 友梨亜、それはどういうことだ。

 少しどころかいい所はいっぱいあるだろう。

 

「それよりも友梨亜ちゃん、夏休みなんだけど一緒に海に行かない?」


「海ですか……」


 友梨亜は一瞬何か考えるようなそぶりを見せた後、ちらっとこっちを向いた。


「いいですよ。その変わり1つ条件を聞いていいですか?」


 友梨亜は最高の笑顔で、俺達を見まわした。

 この条件って何なんだろうな。

 嫌な予感がしてならない

 

「お兄ちゃんの変わった理由を教えてくれませんか?」


 いきなり友梨亜はとてつもない爆弾を投下しやがった。

 見ろ、美雪なんか汗すごいかいている。

 

「友梨亜ちゃん、雄二ってそんなに変わったのかな」


 美雪は笑顔で話すが、内心は相当焦っている様子が手に取るように分かる。

 何か言い作戦はないものか。

 そのように言う、友梨亜はどこか張り切っていた。

 

「はい。突然お兄ちゃんの性格が大人っぽくなったり女の子の彼女ができたり、夜遅く帰ってきたりと昔の兄にはあり得ない行動をしています……何より」


 そう言いながら、友梨亜は俺の顔を見ながら真剣な表情で言った。


「お兄ちゃんがたまにだけど、心ここにあらずみたいな目をしていて……どこか遠くに行ってしまうような気がするんです。お兄ちゃんが寝ている時も、「友梨亜……逃げろって」うわ言のように呟いていて……私心配なんです」


 真剣な表情の友梨亜は初めて見た。

 さっきの茶化している口ぶりが嘘のように真剣である。


「なんだ? お主たち、友梨亜にはアウトブレークのこと話してなかったのか」


「真奈」


「アウトブレークって……何のことですか」


 友梨亜は真奈の方に顔を向けてそのことを尋ねる。

 

「その名の通りじゃ。1年後、この島は細菌感染にあって崩壊するらしいのじゃ。」


 その話を聞いた瞬間友梨亜はケラケラと笑い始めた。

 そりゃそうだよな。これから感染テロが起きて感染者達がウヨウヨ出てきますよって言って、誰が信じるんだ。

 よく、真奈は俺達の話を信じたと思うよ。

 

「そんなわけないじゃん。みんなテレビやゲームの見すぎだよ」


 そういい友梨亜は笑い続ける。

 

「友梨亜信じられないかもしれないが……来年の5月にアウトブレークは起こるんだよ」

 

「雄二と美雪は起きた時の被害を最小限にとどめるために、未来の世界からきたのじゃ」


「タイムトラベルなんて……それって何の漫画の話? 真奈ちゃんも面白いね」


 友梨亜は俺達の顔を見ながら楽しそうに笑っている。

 やっぱり無理だよな。

 そんなこと言って、普通の人が信じるわけがない。

 

「友梨亜よ。お主がどう思おうが勝手だが、童はこの話はかなり信憑性があると童は思っておる」


 そういう真奈の顔はどこか憂いに満ちた目だった。

 

「そう言えば雄二達は何故童がこの話を信用したか言っておらんかったな」


「それは……」


 確かに俺は真奈からその話を聞いていない。

 化学研究所の話で納得したもんだと思っていた。

 

「友梨亜はあの2人を見てどう思う?」


「どうって言われても……昔とちがうなぁ~としか思わないけど」


「あの2人の考え方や戦い方は完全に大人のそれと同じじゃった。でも1番引っかかったのはその2人の目じゃ」


「目?」


 友梨亜はそう言いながら首を傾げている。

 俺も首をかしげている。

 

「そうじゃ。時折何やら覚悟を決めたような目つきをする時がある。あれは修羅や地獄をくぐりぬけてきた者だけができる目じゃ。あれを見て童は思ったのじゃ。こ奴らは只者ではないと」


 真奈には俺等のことがそう見えていたのか。

 俺はそのようには思わなかったけどな。

 

「その割には童や友梨亜には慈しむ目で見ている。まるで死んだものがよみがえったことを喜ぶような目じゃった。その目を見て童はお主たちの話を信じてみようと思ったのじゃ」


 「まっ、その他にもあるんじゃがな」といい、真奈は話をしめた。

 真奈がそんなことを思ってくれているとは思わなかったな。

 逆に俺等のことをそこまで観察しているとは思わなかったしな。

 そう言われた友梨亜は押し黙ってしまった。

 真奈の話に心当たりがあったのだろうか。

 友梨亜も何かを考えるようにクッションを抱きしめていた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん?」


 友梨亜が静かな声で俺に話しかけてきた。

 その声は静かで落ち着いていたがどこか悲しそうな声だった。

 

「6年後友梨亜は何をしてたの?」

「それは……」

 友梨亜とは前回は1度も会っていない。

 朝、学校に行く友梨亜を止めてこれから起こることを説明したが一笑されてしまった。


 『お兄ちゃん、夢見すぎだよ」


 『大丈夫。私は死なないから。』


 『お兄ちゃん。また後でね』


 今でも友梨亜のその言葉が頭によぎる。

 どうして止められなかったのかと言う後悔の念がいまだに俺の頭に残っている。

 

「そうか……友梨亜死んじゃうんだね」


 友梨亜は何故かはかない瞳をこちらに向けた。


「でもさ、お兄ちゃんが最近おかしい理由がわかったよ。急に美雪さんって言う美人の人が来たり、夜どこかに勝手に行ったりとか、友梨亜も納得だよ」


 その後小さく「よし!」と言って下を向きこちらに向き直る。

 それは先ほどとは違う何か決意を秘めた目で、こちらを見てくる。


「お兄ちゃん、この後の未来って……変えられる? 私は大切な人達を守れる?」

 

「当たり前だ。未来は変わるし変えられる。既にお前に今この話をしている時点で既に前の世界の出来事と違ってるんだ」


 友梨亜は「そっか」と言うと少し安堵した表情を浮かべた。

 友梨亜も不安だったのかな。

 いきなり俺たちにそんなことを言われて。

 急に自分が死ぬと間接的にだけど言ってしまったしな。


「友梨亜よ、童達は来年の5月に起こるアウトブレーク対策として訓練をしているのじゃ。よければお主も訓練に参加せぬか?」


「私なんかがやってもいいの?」


「別に童はかまわんぞ。1人でも多く仲間がいた方がいい。その方が童としても安心できるしな」


「真奈ちゃん、ありがとう」

「こら抱きつく出ない!! その近づけてくる顔を話すのじゃ」


 友梨亜に抱きつかれ、怒りながらもどこか嬉しそうな表情を浮かべる真奈である。

 こんなことは今までに経験したことはなかった。

 友梨亜もこんな話を信じなかったし、真奈も今までならこんな訓練等行わなかった。

 もしかしたらこれも全部美雪のおかげなのかな

 

「ちょっと、雄二、なにこっち見てるのよ。」


「お兄ちゃん。美雪さんにエッチな目で見たらダメだよ」


「こら雄二、お主何をやっとるか」


 美雪、友梨亜、真奈で三者三様の反応を示してくる。

 あぁ、いいなこんな日がいつまでも続けば。

 そう俺はこの時思った。

 それは、これから始まる夏休み近くの出来事だった。


ご覧いただきありがとうございます。


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