いつもと違う放課後の帰り道
「雄二、どう? 可愛い女の子を侍らして歩く気持ちは?」
「……あまり気持ちのいいものではないな。なんか見せものみたいだし」
現在俺と美雪は校門をくぐり、駅前へ向かって歩いている。
一緒に歩いて帰るのは……まぁ100万歩譲って許そう。
ただ、態勢が問題なんだ。
俺の左腕に自分の腕をからめてひっついている。
「あん……美雪さん? やっぱりやめません?こういうのはほら今後の人間関係がこじれるだけで、有益なことなんて何もありませんし……」
ちなみに今なんでこんなことになっているかというと先ほどの美優との件が関係してくる。
あの後何度も美雪の前で謝り、誰もいない教室に移り土下座をし、そしていくつかの条件を付けてやっと機嫌を直してもらえた。
その条件の1つ目が登下校は一緒に通うことだ。
今までは一緒に通っていたがそれは人通りの少ない所に限定していたが、それが今回のことで限定はなくなり、ちゃんと教室まで2人で登校を行うことに代わった。
2つ目が学校でのファーストネームの呼びあいの解禁。
学校では人目のあるところでは安城さん、岬君と呼び合っていたがそれもなしになった。
他にもまだ色々あるのだが今の所大きな影響がある所はこの2つである。
「だめよ。私が雄二の婚約者だってことをみんなに知ってもらわないといけないのだから。そうすればもう私の周りに悪い男が寄ってこないし、雄二に悪い虫も付くことはないし一石二鳥でしょ」
そういい、美雪は意地の悪い笑みを浮かべる。
美雪が言っている悪い男とは多分由良のことだろう。
確かに美雪は今まで由良に絡まれていて、そのことを屋上で昼ごはんを食べている時によく愚痴っていた。
どうやらあの噂であった由良と美雪が付き合っている噂もどうやらデマらしい。
先ほど土下座をしている時に美雪に聞いてみた所「その時間は雄二と一緒にいたのだけれど……まさか忘れたわけではないよね」と言われてさらに激昂してしまった。
もう美雪に対して余計なことを言うのはやめよう。
「でも、それだとその……俺の立場と言うものが……」
「いいじゃない。雄二の立場なんて。今度愛しの立石さんとデートするんだし」
「デートって……そんなんじゃ……いや、なんでもないです」
最後の言葉の所で美雪に思いっきり睨まれてしまった。
「それより、これからあなたの家に向かうのでしょう? 友梨亜ちゃん、今日はいるの?」
「あぁ。今日は部活も休みだと言っていたからもう家についてるんじゃないかな」
確か友梨亜は今日は部活がないため既に家に帰っているはずだ。
中学校はもう終わっているはずなのだから俺より早く家に帰ってきてもおかしくはない。
「じゃあ、それは都合がいいわね。何かお茶菓子でも買った方がいいかしら?」
「そうだな。真奈も来るころだし、ケーキか何か買っていくか」
確か友梨亜はショートケーキで真奈はモンブランが好きだったかな。
俺は前の世界の知識をフルに生かして2人の好きなケーキを考えていた。
「じゃあ私、チーズケーキがいいかな」
「俺はチョコレートケーキだな」
「雄二は本当にチョコレートケーキが好きね。昔も作って上げた時泣いて喜んでたじゃない」
「あれは不可抗力だ。ケーキなんてもう食べれないと思ったからな。しかも美雪が手作りで作ったといたらうれしいに決まってるだろ」
前の世界で美雪が俺の誕生日の日に持ってきてくれたケーキは本当にうれしかった。
これを作るためにわざわざ農園で取れた小麦を使って1から作ったことを告げられた時はすごい驚いし、美雪の頑張りに感動した。
そこまで手間暇を込めて作ってくれるなんて思わなくて、あの時は美雪の前で思わず泣いちゃったんだよな。
「そんなにうれしかったのなら、また作ってあげようか?」
「本当か? あれまた食べたいと思ってたんだよ」
「今は材料も揃ってるし、いいものができると思うから雄二も期待しててね」
そう言いながら美雪は俺に向かって微笑んでくれた。
この笑顔も守って行かないとな。
美雪だけじゃない。
真奈や沙耶、友梨亜や美優、全ての人の笑顔を守れるようにならないとな。
俺は美雪を見ながらそのことを強く思った。
「由良さん、聞きました。1年の岬ってやつ安城さんと仲良く腕を組みながら帰っていたって」
「あぁ、知ってるよ。本当にあいつはむかつくガキだな」
「やっちゃいますか? あいつぐらいなら簡単にボコボコにできますよ」
「まぁ待て、それでもいいがまずは外堀から埋めて行こうぜ」
「外堀って……由良さん何をするんですか?」
「お前は黙っとけ。それはきっと俺達にとっていいことだからな」
「分かりました。由良さん任せますよ」
「あぁ任せとけ。さて、今から楽しみだな。あのガキがどんな表情をすることになるのかがな」
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由良達のたくらみは次章以降で判明します。
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