お前に死んでほしくない
「お主らは一体何者じゃ。童をどうする気なのだ?」
「私達はあなたの味方だから。とにかくお屋敷に戻りましょう」
「またせたな」
そういい、今度は助手席に見知らぬ男が1人入り込んできた。
その男は童から見るとひどく懐かしいように感じる。
「雄二、遅いわよ。それよりもこの幼女が本当に高宮真奈なの?」
「あぁ、この幼女が高宮真奈だ」
「誰が幼女じゃ」
この2人は童に対してそうとうひどいことを言っているのがわかる。
女の方は童の姿を見て絶句しているようだった。
こ奴らめ、見てろ。
童が後3年立った時にはボンキュッボンのナイスバディーになってるのじゃからな。
「それよりも、早く屋敷に行きましょう。追手が来ても困るわ」
「そうだな。美雪、お前マニュアルの運転できるよな?」
「当たり前でしょ。昔ガソリンタンク積んだトラックに乗って小学校にも突っ込んだことあるの忘れてないでしょ」
「あれは大惨事だったな。確かギリギリで運転席から飛び降りてあの爆発に巻き込まれなかったんだよな。あの時お前よく生きてたな」
「当然でしょ。雄二を残して私は死なないわよ」
そういい笑いあうこの2人に童は恐怖を感じていた。
この2人は確実に数多くの修羅場をくぐってきたものだ。
多分その目で多くの命が散って行く所や、自分で数多くの命も奪ってきたのだろう。
それは彼らの目を見れば分かる。
あの目は行くつもの修羅場を越えてきた目だ。
しかも2人とも童が見た所高校生ぐらいに見える。
もしかすると、先ほどの奴らよりも達が悪いかもしれぬ。
「お主らは何が望みだ」
「えっ?」
はしる車の中、童は助手席の男にそう呼びかけた。
「童は高宮財閥の1人娘じゃ。普通なら童の父や母は相当不正を働いてきた。恨まれるのも無理はない。さっきの男達も、童の命を狙いに来ていた。その童を助け、お主たちは一体童に何を望む?」
童の言葉を聞き男は何も言わず窓の外を見ている。
何かを不気味なことを考えるように
「童を助けて何をたくらむ? 金か地位か? それとも……」
「言ってることが分かんないよ。善意で助けたって言ったらだめ?」
男の言葉に童は驚いた。
こ奴。善意であそこまでのことをしたというのか?
「いや、善意じゃないな。俺は高宮真奈に死んでほしくなかった。だから助けた。それだけだ」
「それだけであんな危険なことをするのか? 見ず知らずの童の為に?」
「あぁそうだ。お前の為にだ。何度でも言うぞ。お前が危険な目にあったら、俺達が絶対助けてやる」
「なっ」
童はその言葉に俯いてしまった。
こいつらはなんというやつらだ。
今まで金や地位目的に童らに近づく輩しかいなかったがこ奴らはそんなことは考えておらんのか。
この者たちはなんという愚鈍な奴らなのじゃ。
童から大金をせしめるチャンスだというのに。
こんな考えを持つ奴らもいるんじゃな。
こ奴らには屋敷に戻ったら盛大にもてなしてやらんとまずいのじゃ。
そんなことを考えていると前の方に童の屋敷が見えるのが分かった。
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