次の目的
昼休憩が終わり、沙耶を理科準備室に送り届け、俺は美雪とともに教室に戻る最中ある話をしていた。
「次はどうするの?」
「次って?」
「この後よ。アウトブレークまで時間がないじゃない。沙耶とは仲良くなったけどこの後何をするの?」
彼女が言っているのはこの後の行動のことだろう。
それについてももうやることは決まっている。
「タイムリープ理論を提唱した人に会いに行く」
「それって高宮真奈のこと言ってるの?」
「そうだ。真奈に俺は会いに行く」
高宮真奈とは高宮財閥の1人娘で、IQ200の天才少女である。
アウトブレーク時、彼女の屋敷に避難した際、彼女の私室でタイムリープの設計書を見つけて、それを沙耶が作った。
正直彼女とは俺は会いたくはないが、彼女とは何としても会わないと行けない。
「美雪はさ、以前俺の家に重火器が山のようにあるのは不自然だって話をしたよな」
「そうね。刀だけならまだ分かるけど、銃やサブマシンガン、グレネードが家にあるのはおかしいって言った覚えはあるわ」
「あれな……高宮真奈から譲ってもらったものなんだ」
「本当に? でも高宮真奈とはあの時私会ってないけど……」
「そりゃそうさ。あの時真奈は……すでに感染者になっていたのだから」
その話を聞いて、美雪は絶句している。
「じゃあ、あの時部屋で死んでいた感染者は……」
「あぁ……高宮真奈本人だよ」
俺が言った言葉に、美雪はまだ信じられないようだ。
そりゃそうだ。
あの時屋敷で感染者として首を落とされていた人物が高宮真奈だと誰が思うか。。
「あの日俺は彼女を誘ったんだよ。俺の側に来いって。そうすれば守ってやるって。それなのにあいつは……俺の所にこなかった」
そうだ。俺はアウトブレークの前日にあいつの屋敷に行ったのだ。
『真奈、俺の所に来ればお前を守ってやれるんだ。だから一緒に俺の家にこい」
『何をお主は言っておる。お主達がこちらに来た時に立て籠る場所がなくてどうする? お主らも全滅してしまうじゃろ』
『それじゃあお前が死ぬんだよ。お前が感染者に食われて死ぬ所何て俺は見たくない』
『お主は童が死ぬと申すか。くどいが過去の童がそうであったとしても今回の童は違うであろう』
『何をそんな自信を持って……』
『この設備を見ればわかるであろう。この屋敷に張り巡らされたセキュリティーシステム。このシステムがある限り、童の屋敷には感染者など1体も通させんわ』
『それでも……』
『くどい。お主の言うことをここまで聞いておるのだ。これ以上言うとこの刀でお主をきるぞ』
思い出したくもないことを思い出してしまった。
アウトブレーク後、仲間達を連れて真奈の屋敷に皆で行く時には真奈は既に感染者になっていた。
しかも椅子に縛られた状態である。
きっと、使用人の裏切りにあってしまい、椅子に縛られたまま放置されたのであろう。
その証拠に、食料は屋敷にはほとんどなかった。
なぜもっとあの時強引にでも連れ出さなかったのか。
今でもその後悔が強く残っている。
「辛かったのね」
そう言いながら美雪は俺を優しく抱きとめてくれる。
「雄二あなた泣いているわよ」
美雪に言われて、自分の顔に手を当てると泣いていた。
「どこかで少し休もう」
そんな風に優しく声をかけてくれる美雪。
「大丈夫だ。それよりも2人でいる所何て見られたら……」
「今の雄二は大丈夫じゃない。今は誰も見てないから一緒にいよう」
そういう美雪は俺に優しく微笑みかけてくれる
こんなときだけ優しくしてくれる美雪はずるいと思う。
そして安心したのか気を緩めると目じりから再び涙があふれてきた。
「大丈夫。今はまだ、皆生きてるから。今度こそ2人で大切な人を救おう……ね」
その言葉を聞いた瞬間、俺は嗚咽を漏らして泣いてしまった。
そしてこの時、俺は誓った。
大事なものは2度と失わないようにしようと。
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