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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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開戦直前の兵力等

 夜襲から帰り、戦果を報告する。


四百名いないくらいの軽装歩兵を残り三十から五十名くらいまでに減らせたこと、指揮官を殺せないまでも戦線離脱まで追い込めたことがホルツホックの使者からも伝えられた。


同時に、アインハイツ将軍に守られていたいくつかの部隊が先頭に立ったことが報告される。


こちらの被害は十数名であった。


さすがにゼロとはいかなかったが、十分すぎる戦果を上げたと言えよう。


夕方の報告では、オージュス連合が急速に森の出口に向かっていることと、最後尾にいた重装歩兵がそのまま動かないこと、アインハイツ将軍の部隊も同様動かないことが告げられた。


そして、目視による指揮官や兵科、兵数の報告がなされる。


一般的に、こういった夜襲で大打撃を受けた場合は、再編成が行なわれたり、会議が行なわれたり、慎重になったりと、やや緩やかになることが多いのだが、弔い合戦のようなノリなのだろうか、急速に森の出口に集結し、明日には開戦の雰囲気のようだ。


何やら急いでいるような印象を受ける。


最も精強だと思われるアドランデ将軍の重装歩兵、メイン部隊となるはずのアインハイツ将軍の軽装歩兵のそれぞれ千、合計二千がいまだ戦場近くにもおらず、別動の様子もないことが全く読めない。


ただ、ほぼ二十時間くらいの遅れとなっており、どんなにこれから急いで行軍したとしても半日遅れの到着は確定的である。


後詰めの予備隊か、別働隊か、退路確保要員なのか、未だ目的は見えないのであった。


琴葉隊も最初の予定通りに布陣する。


速ければ明日の朝からの開戦となろう。





 オージュス連合国はドルディッヒ王率いる重装歩兵が五百、弓兵が三百、工兵が百、輜重隊が百、騎馬も百、各兵種毎に指揮官、近衛兵団二百を率いる褐色の男アールッシュ、そしてヴィータ国の弓兵が千七百の合計三千である。


森に来るまでにホルツホックの迎撃と罠で失ったのはエーザスの軽装歩兵三百、ヴィータ国の弓兵三百が主立ったもので、残りは各隊とも十数名ずつは被害が出てるが、細かくは計算に入れていない。


かなり激しい罠や迎撃だったのだが、ホルツホック、フラハー、オージュス連合それぞれが予想しているよりも遙かに少なかった。


これは一重にホルツホックが情報収集を最優先しており、迎撃は万全でなかったことが一番大きい。


また、エーザス副官の先導部隊の功績が無視できない。


罠の解除と最も迎撃を受けたことが他の被害を圧倒的に減らしたのだ。


夜襲で四百を失ったため、結局は戦場に到達するまで千の兵を失ったことになる。


予定では、それでも五千の兵が到着しているはずであり、フラハーを圧倒していることになる。


実際は異なるが、プルミエ国としての予想は、千しか相手戦力はないハズなのだから、五倍の兵力差があるはずなのだ。


戦場となる平野で対峙した際、フラハーが千五百の兵を展開していることにやや驚きを覚えたが、全くもって不思議な数字ではない。


むしろ想定内といえよう。


前回のプルミエ国は二千の兵での侵攻なのだ。


それで敗北を喫した以上、それ以上の兵数で来ることは誰しも予想できることであり、それに対抗すべく兵数を増やすのはむしろ当然。


逆に、本当に千しか展開していないのであれば、伏兵を確信してしまうかも知れない。


それゆえに、フラハーが展開している千五百はごく自然に見えるのだった。


ウィッセン国の重装歩兵を襲撃した兵にタカの紋章、つまりフラハーの兵が混じっていたというエルドス近衛兵長の報告があったため、その点の計算はやや合わない気もするのだが、誰も気にとめない。


実際にどのくらい混じっていたのかも定かではないこともあり、気にならなかったようである。





 対して、カンナグァ連邦フラハー国としては、不気味さが拭えない。


戦場に現れたのは三千の兵。


もちろん、前回が二千で敗北したのだから、この数字は自然である。


ホルツホックの罠と迎撃、夜襲と千の被害を与えた上でである。


元の四千が三千になったというだけであれば構わないのだが、森に侵入したのは六千である。


二千が森におり、しかもウィッセン国の名将アドランデ将軍が率いる重装歩兵千、プルミエ国の主力である軽装歩兵千を率いるアインハイツ将軍の両名が戦場に不在なのだ。


千の軽装歩兵を預かったいることからも、まだプルミエ国内での信認はあるのは明白であり、その地位、経験からして国内トップであることは間違いない。


戦場に現れた指揮官はドルディッヒ王は未知であるが、おそらくは能力が高いとは思えない。


率いているのが近衛兵団であることから、本格的な軍人とは思えない褐色の異邦人、他は三百以下を統率する指揮官である。


兵数ではないが、五百以上の兵を指揮するものがいないということは実力も懐疑的である。


ヴィータ国の弓兵隊は有名だが、まず第一に援軍であることもそうだが、どうもウワサに聞くほど優れた弓兵とは思えぬ練度である。


プルミエ国としては、色々と合点がいかない部分が多く、疑ってしまうとキリがないのだが、つかみ所のない不気味さを感じることとなった。


会戦が始まると、ホルツホックからの連絡も機能するかわからず、常にアドランデ将軍、アインハイツ将軍の動向を気にしなければいけないのは想像以上に神経を使うものとなるだろう。


半日は少なくとも奇襲を受ける距離にないため、この日中十時間くらいでおおよそ勝負はつけたいところだ。


両者思うところはあるが、オージュス連合国の布陣を待って、会戦が開始されることになる。

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