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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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アインハイツ将軍とエルドス近衛兵長

 自分では埒があかないということと、これ以上は全体に関わると判断したアインハイツ将軍は、自身の判断ではなく、王の判断を仰ぐことにし、ヴィータ国の弓隊を挟んで、エルドス近衛兵長にも伝えると、


「承知した。他国のこと、それもあのアドランデ将軍のことである。ドルディッヒ王の指示を仰ぐゆえ、私からの伝令を待って頂きたい」


と言われ、最終的にエルドス近衛兵長自らがわざわざアインハイツ将軍の元を訪れる。


「ドルディッヒ王に伝えたところ、「ここでアドランデ将軍の機嫌を損ねるわけにも行かぬ。何か腹に抱えるものもあるのかも知れぬゆえ、前を行くヴィータ国の弓矢隊と距離が開いても良いから、アドランデ将軍の行軍に合わせよ」とのお言葉だ。無論、これは他の指揮官の意見を踏まえての王のお言葉だ」


そう言って、珍しくエルドスが微笑む。


「むぅ。致し方ないか。まぁ、王がそういうのであれば従おう」


とアインハイツ将軍も大きくため息をつく。


「正直申すと、エーザスだけが孤軍奮闘している。アールッシュ近衛兵長も私も自身の部隊の統率で精一杯だ。重装歩兵部隊もさすがに規律だっているが、王のご機嫌に振り回され、疲弊している。此度のことも、王の機嫌を損ねてしまい、周囲の指揮官で話あって、王に最終決定してもらったのだ」


エルドスが珍しく多弁で、表情も豊かだ。


馴れない森で色々とまいっているのであろう。


決して仲が良いというわけではないが、他国の連中よりは顔も知っているし、弱音を吐ける相手も限られているからだろう。


アインハイツ将軍においてもそれは同様だ。


他国の兵にはもちろん、部下にたいしても見せられないこと、言えないことは多い。


指揮官同士、相通じるものはある。


「まぁ、あの王であればそうだろうな」


多少緊張が取れたようで、アインハイツ将軍もにこやかに微笑む。


「これからは、王への直接の伝令は控えて頂き、私を通して貰えると助かる。これ以上機嫌が悪くなってもからな。色々と私に対しても不信感はあるやも知れぬが、アールッシュのような敵愾心は私は貴殿に持ち合わせてはいない。信用して欲しい」


そういうと、エルドス近衛兵長は深々と頭を下げる。


アールッシュの敵愾心に触れたことや、頭を下げたことに驚いたが、アインハイツ将軍としては、安堵以外の何物でもなかった。


敵の敵は味方と良く言うが、アールッシュの味方ではないようだということが窺えたからだ。


「アールッシュめ。何やら私に敵対心を持っていいるようでな。やたら反発してきおる」


アインハイツ将軍もついには露骨に愚痴をこぼす。


「いや、近衛兵団新設を提言した手前、申し訳なく思う。かのものを異国人と哀れんで推挙したのが間違いだったかも知れません。王の後ろ盾があるからか、将軍にも不快な態度を取っていることは承知しており、たびたび注意したのだが。ヤツはどうも個人の感情を優先し、将軍のように国全体や先をみることができないようだ」


とエルドス近衛兵長も同調する。


アインハイツ将軍はエルドス近衛兵長としばらく愚痴を言い合い、


「では、今後は王にではなく、エルドス殿に伝えよう。王には上手く伝えてくだされ」


そういって、にこやかに送り出すのだった。

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