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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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行軍の速度

 夜襲の報を受け、全軍一時待機となったため、行軍は停止し、現在地に留まった。


エーザスの先頭部隊のおよそ一時間行程後ろをアールッシュ、同じく一時間行程後をドルディッヒ王の重装歩兵部隊、そして二時間遅れてエルドス近衛兵団がいた。その後一時間後ろをヴィータの弓兵が追随し、なんと十時間遅れでアインハイツ将軍が続く。さらに二時間遅れて最後尾をウィッセン国の重装歩兵がいた。


シーハーフより提供を受けた分の輜重隊の姿はない。





 エーザスの先頭部隊が罠を解除しつつ慎重に森を進む。


想像以上の罠の数と種類で多くの同胞が倒れていったのと、その解除に時間がかかっていた。


迎撃もひどく、思っていたよりも後軍速度が伸びなかったのは前述の通りである。


こういった場合、後ろが詰まるわけだが、遅い進軍にもかかわらず、アインハイツ将軍以降は大幅な遅れが生じていた。


ドルディッヒ王の重装歩兵部隊の遅れは、王の我が儘ゆえであり、その前後の近衛兵団はこれにあわせたことで説明できよう。


後衛のエルドス近衛兵長はヴィータ国が他国であり、弓兵という射程がある兵科ということもあって、わざと王の安全確保のために距離をおいたのである。


他国ゆえに連絡不行き届きになる可能性もあったのだが、安全を優先した。


加えて、明らかに弓矢隊が狙われており、先頭のエーザスと併せて集中的に迎撃が降り注ぎ、ヴィータ国の進行が遅れたことも理由として大きい。


しかし、比較的大所帯で連携が悪いとはいえ、アインハイツ将軍の行軍が悪いのは理由がある。


それはウィッセン国の重装歩兵部隊が一向に進軍を早めないからである。


アインハイツ将軍も何度か重装歩兵を指揮するアドランデ将軍に進行速度を速めるように伝えに行く。


何度伝令を送っても早くならないアドランデ将軍に苛立ちを覚え、直接向かうも、


「速く森を抜けたい気持ちは察する。我らも努力するゆえ、兵が森になれるまで今しばらくご容赦願いたい」


と不敵に笑うのみなのだ。


次第に、言い訳が変わり、


「我が軍の安全を期すため、最適な進度を行なっている。口出し無用」


と最終的には逆ギレし出す始末だ。


アドランデ将軍と言えば、オージュス連合国において屈指の名将として知られ、魔族、魔獣、異民族やバラン王国との小競り合いなど戦歴も数多くある。


アインハイツ将軍とは知名度、実績など比べようもないのだ。


最初はアインハイツ将軍も遠慮気味に伝えていたが、最終的には語気を強めていた。

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