朝美とエーザス
「スパツェロ、どいてろ。あたしがやる」
そういって、朝美がエーザスに向けて投槍する。
スパツェロの兜をかすめるようにエーザスに向かって槍がまっすぐに突き進んでいくが、エーザスはかろうじて剣ではじく。
あらためて槍が飛んできた方向を見ると、自軍の兵をすり抜けて赤い髪の少女が徒手で突っ込んでくる。
瞬く間にエーザスの前に来ると、側頭部を打ち抜くように蹴りを放つ。
エーザスは奇跡的に左の盾ではじくが、軽そうな女性のそれとは思えない、体重の乗った強烈な蹴りであったこともあり、防いだ手ははじかれ、膝を付く。
すぐに、逆方向の蹴りが飛んできて、剣が弾き飛ばされエーザスは無防備になる。
朝美が腰に差していたナイフを抜いてエーザスに突き刺そうとした瞬間に、エーザスの近くにいた兵が身を挺して間に入り、ナイフはかばった兵の胸に深々とさせる。
「チッ。まだだ。逃がさねぇ」
朝美はやり損なったことに舌打ちをするが、追撃の手を休めようとしない。
「突出しすぎだよ。朝美ちゃん。一度下がって」
のぞみの指示が聞こえたため、周囲に目配せをし、やや囲まれつつあることを認めると、一度下がる。
テラガルドから槍を受け取ると、立て続けに投槍で追撃を図る。
一本、二本と投げると、その都度、エーザスの前にかばうように兵が盾となり、身代わりに倒れていく。
のぞみも投げナイフを五、六本立て続けに投げつける。
積極的にのぞみが攻撃をしかけるのは珍しいため、相手の指揮官をなんとしてでも倒したいのであろう。
(そこまで重要かつ危険なヤツなのか・・・・・・あいつは。なら逃がすわけにはいかねぇ)
朝美はそう呟くと、立て続けに槍を投げ続ける。
一本がエーザスの右肩を貫いたのは遠目で確認できたが、他の兵に引きずられるように奥へと移されてしまう。




