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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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迎撃戦略会議

「現状でのボクなりの分析だけど・・・・・・」


そう言って、のぞみは自分の考えを話し始める。


「隊列を考えると、プルミエ国がメイン、他はあくま援軍という位置づけだと思う。もっと対等な合同侵攻であれば、ヴィータ国もそれなりの将軍が来るはず。ビーゼス国やシーハーフからも、派兵こそなくとも、将軍や指揮官は参加させるはずだからね。ウィッセン国の侵攻が明らかに遅いっていうのと、有名な将軍が指揮しているところが解せないなぁ。多分、撤退路の確保ってのが一番疑わしくて、戦争には参加しない可能性もありうるけど・・・・・・。それ以外では完全な別働隊として動く、か」


「別働隊っていうのが、一番納得いく気がします。単独で部隊を動かす必要があり、重要な任を担っているからこその歴戦の将軍でしょう。下手をするとこちらが本命なのかも知れません」


フラハー王はのぞみの考えに同調する。


「であれば、狙いは迂回して砦を落とすというのが目的でしょうか?」


スパツェロが口を挟む。


「そうじゃのぅ。アドランデ将軍の重装歩兵だけならそうかもしれんが、アインハイツ将軍の軽装歩兵やヴィータの弓兵もそっちに加わるとなるとかなりの規模じゃ。南に抜けてヘスを落とそうとすることもありうるじゃろ。さすがに北に抜けてマギー村、フェルゼン国を狙うとは考えにくいしのぅ」


アス老人も考えがまとまらないのか、自問自答するように呟いている。


「ボクは、砦を落とすのが狙い、あるいは、本当に撤退路の確保というのが可能性が高いと思ってる。砦の位置は前回の侵攻の際に何となく敵もわかった気になったと思うんだけど、ヘスやフェルゼンについてはまだ地理的な把握はしてないと思うだよね。そんなところを目指すリスクの方が大きいと思う」


一同はのぞみの言に頷く。


今出た中では最も、納得がいくものであった。


「うーん。わたしがアドランデ将軍なら、おいいしいとこ頂いちゃう作戦をするなぁ・・・・・・」


皆が発言者である琴葉をみて、驚く。


(起きていたのか!)


(会議を聞いたいた)


という小声がチラホラ聞こえるが、本人には聞こえていないようで、のぞみと朝美は安心する。


「「いざという時の後詰めとして、後ろに控える。基本的には参戦しないから手柄は横取りしない」そういって、プルミエ国とフラハー国を戦わせて、最後に自分たちが弱った方を倒せば良くない?」


琴葉は左手の人差し指を唇の下につけて、斜め上の宙空を見ながら発言する。


「相変わらず、発想が卑怯ですね・・・・・・しかし、オージュス連合国が一枚岩でないならば、あってもおかしくはない、か」


そういって、ティラドールは冷静に自身の意見を述べる。


古くからの面々は、そのティラドールの態度に驚きながら、成長を微笑む。


今までなら、「なんて卑劣な。そんなマネをするはずがない!」と感情的に否定していたはずだ。


度重なる想定外の言動を直近で見過ぎたのだろう。


多少のことでは動じず、あり得る事象として認識できるようになっていたところに成長が伺える。


「ありえないことはない、ね。さすが琴葉ちゃん。でも、もしそんな事態になっていたら、オージュス連合国の本国領域でも何か起こっているかも知れないね」


のぞみも可能性の一つとして否定はしない。


何よりも自分にその発想はなかったため、素直に感心するが、現実的にはないだろうと思っていた。


その後のオージュス連合国内でのウィッセン国の立場は難しいものとなるからだ。


プルミエ国と敵対するのはもちろん、他の国も黙ってはいないだろう。


数百年の連合国の歴史を瓦解させることになる。


戦力として計算しないわけにはいかないため、別働隊として動くことを視野に入れて作戦を練っていく。

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