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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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侵攻の知らせ

 統一歴九九八年九月十日、ホルツホックからの知らせで、大規模な森への侵攻が伝わった。


侵攻を知らせる狼煙が上がったのが十日であるが、日が経つにつれて詳細な情報が使者によって伝えられる。





 フラハー王を始め、全指揮官が一番大きな会議用の天幕に集結する。


「すでに狼煙を見て侵攻は知っていよう。毎日二回、ホルツホックより使者が来て詳細な情報が得られている。今日は現時点でわかっていることを整理して伝えたい」


そういって、話し始めるフラハー王は思ったよりも深刻な表情である。


「まず、プルミエ国以外の兵も参加していることがわかった。ブーツの紋章の他に、弓矢の紋章、鎧兜の紋章が確認されている。これはプルミエ国、ヴィータ国、ウィッセン国の三カ国だ。残りのビーゼス国、シーハーフ国が確認できていないため、他の経路からの侵入も疑い、広い範囲での索敵に切り替えている。ただ、おそらくは各国が得意としている兵科の問題で、実際にこの三国で間違いないだろう」


そこまで言うと、指揮官達は皆一様に苦々しい表情へと変わる。


単独でない以上は総力戦であり、圧倒的な兵数が予想される。


この時点で撤退を前提とした戦いが覚悟されるからだ。


「もうわかっていると思うが、総力戦だ。わかっているだけでおよそ五千以上の兵が侵入している。軽装歩兵、重装歩兵、弓兵、工兵、それにわずかだが騎馬隊もいるようだ。特に最後尾を務める重装歩兵は精強だとのことだ」


さすがに指揮官達にざわめきが生じる。


「なお、のぞみ殿が予想していたように、ドルディッヒ王がいるようだ。前後を近衛兵に守られて進軍しているようだ。そして、アインハイツ将軍も同行していることを視認している」


ドルディッヒ王の名前が出た瞬間にのぞみに視線が集まる。


フラハー王が言うように、のぞみが事前に予測していたことが的中していたからだ。


「隊列としては、先頭にプルミエ国の軽装歩兵がおよそ七百、加えて工兵が罠を解除しながら先行している。次いで近衛兵団がおよそ百、王と重装歩兵五百、また近衛兵が百続いている。ヴィータの弓兵が約二千ほど後を追従している。そしてアインハイツ将軍率いる軽装歩兵千と弓隊三百、騎馬百が続く。最後にウィッセン国の重装歩兵が千もいるのだが、こちらはかなり後方におり、なぜか進軍は遅いようだ。指揮官はオージュス連合国でも屈指の将軍として知られるアドランデ将軍が指揮しており、兵も精強だ」


そこまで言い終わると、自分で言っていて絶望感というか、諦めが生じたのか、一度大きなため息をつく。


「約六千か。さすがにちょっとこれはキツイなぁ。まぁ、こっちは三千だから前回同様の二倍差ってワケだ」


朝美も半笑いだ。


「他に何か情報はあるのかのぅ」


アス老人はフラハー王に確認する。


「いえ、基本的には今朝の段階では以上です。あ、一点だけ追加で言うと、前方の近衛兵団の指揮官が褐色の男だったとのことですので、ひょっとしたらバラン王国が何らかの形で関与しているかも?という憶測があります」


バラン王国の名前が出たため、ざわつきが大きくなる。


「いや、そいつは多分、バラン王国とは無関係じゃろ。王の幼馴染みに確かそんなヤツがいると聞いたことがある。名前は忘れたが、前回の侵攻時に捕虜となった敵が言っておったわ。もう七、八年前のことじゃが」


アス老人が否定してくれたお陰でざわめきは安堵に変わる。


プルミエ国単独だったものがオージュス連合国全体との戦いへと変わっただけでも大変なのだ。


この上さらにバラン王国まで出てきた日にはたまったものではない。

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