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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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アールッシュと近衛兵団

 一方、アールッシュは最初こそ規律の取れていた近衛兵団の脆弱性を思い知ることになる。


近衛兵団は「王宮のお飾り」であり、実践力のない「非戦闘要員」であると揶揄される意味を体感したのだ。


実際に、近衛兵に採用されたものは外見での採用も多い上、家柄などの縁故採用がほとんどである。


しかし、これは致し方ないことと言えよう。


王の側近として警護するにあたり、最も大事なのは裏切らないことであり、信用が最も重要な要素なのだ。


古くから仕える家系からの縁故採用は至極当然であり、国賓対応含め、外交の場で見られる事も多い分、外見での採用も理に適っている。


当然だが、良いとこのおぼっちゃんであり、兵士としての根性はないに等しい。


ここに来る前に、野営訓練はしたのであるが、王宮警備の任があるため、かなり手前の森で一泊のみである。


所詮は林間学校くらいの気持ちだったのだろう。


訓練含めほとんど役に立っていない。


虫が出たとか、蛇が出たとかでギャアギャアと騒ぎ、汚いとか暑いなど不満も平気で口に出す頃、先頭を行くエーザスからの指摘を受け、できることから改善し、生存するためのノウハウを学んで実践していく。


近衛兵団に対しても、今までは自分の出自や偏見の目を自覚していたためあまり言わなかったが、初めてと言って良いほどに厳しく叱責、訓示を行なった。


異国の褐色のものが文句も言わずできることをやっているのを見て、なにか思うところがあったのだろう。


自身の家の名声やプライドを刺激したのかも知れない。


エーザスに言わせるとまだ論外とのことだったが、少なくとも不平不満は口にすることがなくなり、アールッシュの指示に従い、敬うものも増えてきた。


すぐ後続のドルディッヒ王率いる重装歩兵部隊は、予想通りドルディッヒ王の我が儘に振り回されていたが、アールッシュも自分が生き延びること、近衛兵団をまとめることで精一杯で、中々に関われないでいた。


しかし、そこは近衛兵団と異なり、本職の軍隊、重装歩兵部隊である。


少なくとも罠の回避や迎撃からの防衛など、軍事面での対応はしっかりとしており、あくまでも問題は王の機嫌取りだけであった。


一日にそれぞれ二回、前後の部隊の指揮官と直接連絡を取り、情報共有と伝達を行なう。


通常は前後の部隊だけで連絡は行ない、大事なことは伝令を使ってアインハイツ将軍に指示を仰ぐ形となっていたのだが、同じ近衛兵団ということもあり、エルドス近衛兵長だけは間の重装歩兵部隊を飛び越し直接話をするようになっていた。


あらかじめそう取り決めていたわけではないが、いつの間にかそうなっていたのだ。


元々、もう一つ近衛兵団を創設しようと提言してくれたことがあり、アールッシュの今がある。


エルドス近衛兵長は偏見なく接してくれる数少ない人でもある。


表だった協力やバックアップはないし、個人的な交流はないが、対等に扱ってくれるだけで十分であった。


今回の侵攻にあたっての軍議においても、賛同してくれることも多く、非常に助かった。


エルドス自身は寡黙であり、人付き合いも軍内部ではほとんどないというのも似たもの同士という共感があったのかも知れない。


ちなみに、近衛兵団の森での態度や行動について尋ねると、「見せしめに一人切った」とのことだったので、規律を重んじ、決断力、行動力、覚悟を兼ね備えているのだろう。


王を守るためと大義名分を掲げ、格好良く参戦を表明したが、自身のことで手一杯となっていたアールッシュだったが、そもそも、近衛兵団も侵攻に加わると最初に宣言したのはエルドスだったことを思い出し、その覚悟が自分には当時欠けていたことを知る。


配下に訓示する際に本当に言っていたのは、部下にではなく自分自身にだったのかも知れないと、気を引き締める。

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