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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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先方隊、エーザス

 先頭を歩くエーザスは思った以上の罠と迎撃に苦戦を強いられる。


本来はある程度兵を先行させ、罠を解除した上で安全なルートを大軍で進みたかったのだが、少数の兵を先行させると、かなり激しい迎撃にあうため、集団での進行を余儀なくさせられていた。


今での迎撃や罠が全力でなかった可能性、ひょっとしたら侵攻そのものが相手の罠、誘導ではなかったのかという疑心暗鬼に駆られ、何度か後続のアインハイツ将軍に伝令を送るが、「予定に変更なし」とのことであり、目の前の現状に対し最善を尽くすことに集中する。


そういった不安に加えて、王と近衛兵団がエーザスをさらに苛立たせる。


野営などを行なったことがないのは仕方がないが、虫や蛇、動物に対する不満や、食事や寝床、汗や着替えなどに対しても不満をこぼす。


日没や月が雲に隠れたりといった、天候によって行軍日程を調整しているにもかかわらず、疲れたと言って休憩を取ったりするため、予定を大幅に遅らせることとなった。


遅くなればなるほど、迎撃は激しいものとなり、魔獣との遭遇率も高まる。


「いかに素早く森を抜けるか」という重要性を理解していないのだ。


エーザスは五度の侵攻全てに参加し、毎回生還するという数少ない兵であったため、一番森での経験値を得ることができた。


それゆえに今回大抜擢を受け、指揮官、それも副官という位置を得ることになったのだ。


当然ただのラッキーボーイではない。


森へ侵入し、生還する。


これは経験したものしかわからないものである。


生き延びるということの難しさを知っているがゆえに、ちょっとしたことが命取りになることもよく知っている。


それがゆえに、王や近衛兵団の行動が死を招くということに激しい苛立ちを覚えるのだった。


アールッシュだけは文句も言わず、警戒心、緊張感を持って任務に当ってくれており、それだけが救いではあったが、いかんせん経験不足は確かである。


前後の部隊ということもあり、連携を取るため、直接会話して情報共有を図る。


最終的には、森の手前で数日野営し、全体の調整を行なった上で平野に出ないと、先行しすぎて自分たちだけが戦場で敵に相まみえることになってしまう。


そのため、全体の行軍状況を森に近づくにつれ、詳細に把握していく。


状況が許せば、最後尾の輜重隊が先頭付近に追いつき、平野への侵攻と同時に物資が戦場にあるのが好ましい。


工兵が簡易な拠点を構築し、長物の武器などもあると、初動としてはベストだろうと考えていた。


しかし、今の状況はそれを許してくれるほど甘くなく、想像以上に迎撃が激しかった。


とにかく速く森を抜けたいと、それだけを願うのだが、苛立ちと焦りだけが先行する。


アールッシュが一度近衛兵団に対し、訓示をしてくれたお陰で、不平不満こそ減ったが、それがなければ見せしめに一人二人斬り殺そうかと思ったくらいだった。


あと一日というところまで到達し、一度行軍を停止し、全体調整の段階になって、ようやくエーザスもアールッシュに苛立ちを詫びる冷静さを取り戻すのだった。


本当の会戦はこれからである。

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