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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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魔獣と水の魔法の実験

「では、事前の取り決め通り、まずは私とアスさんでやってみます」


そういうと、すでに用意してあった大斧で鹿の魔獣に襲いかかる。


「グ、グ、グ、グ、グ、グ!」


威嚇するような鳴き声を出したかと思うと、好戦的にも突撃してくる。


テラガルドは、かろうじて回避する。


意外とギリギリだったので、本人も見ていた周りも一瞬ドキリとするが、再度の突撃の際は余裕を持って躱せて胸をなで下ろす。


突進時に頭を振り回すようにしたため、角の長さの分、見切りを間違ったようだ。


正面から刺さるように当らないと致命傷とは言えないかも知れないが、油断大敵である。


「ふぅ。失礼しました。心配無用です」


テラガルドは呟き、大斧を担ぐ。


わざと後ろに木を背負い、突進を待つ。


残念ながら知能がそれほどではないのだろう、鹿の魔獣は突進してきて、直前でテラガルドに回避される。


木に全力でぶつかって、一番最悪の事態を迎えた。


なんと、木に角が刺さって抜けなくなったのである。


予想外の出来事に、皆が顔を合わせ、のぞみが身を乗り出す。


「順番じゃないけど、ボクがちょっと、試しても良いですか?」


そういって、テラガルドが頷き、皆の元に戻る。


「抜けなさそうですが、油断なさらぬよう・・・・・・」


そういって微笑む。


もとより、のぞみも油断はしないのだが、何があるかわからない。


真剣に頷くと、水がたっぷり入ったバッグを取り出し、野球のボールぐらいの水球を作り出す。


「まずはダメ元のお試しで・・・・・・「水球アクアボール」」


といって、振りかぶって、ボールを投げつけようとするが、元よりの運動神経のなさである。


完全に「女の子投げ」で、山なりであり、むしろ当ったのが奇跡だった。


ビシャと言う音ともに、鹿の魔獣に当って、水は地面に落ちる。


魔法で作ったため、本来であれば形はしばらく維持されるのであるが、対象物に当ったため、形状の維持ができなかったのだろう。


ただの水たまりと化した。


「うーん。やっぱり打撃力はゼロだね。わかってたけど」


そういって、次の手を繰り出す。


「水槍アクアランス」


そう呟くと、水が槍のような形状に変化する。


先のボールの投げ方を見ていた朝美が、歩み寄り、手を差し伸べると、のぞみも槍を渡す。


形状を維持している時間もあまりないため、素早く投槍する。


「うりゃあ!」


かなり勢いよく飛んでいき、その最中も槍の形状は崩れない。


が、ダメ。


あたると、同じようにビシャっとなって、水が下にたまる。


のぞみは懲りずに第三弾を繰り出す。


右手の上で、球状に揺蕩う水を持って、鹿の魔獣に近づいていく。


今度は近接攻撃のようだ。


「水刃アクアブレード」


手刀を作り、それを覆うように、刃に見立てて、水が形作られる。


水を纏ったまま、手刀を鹿の魔獣に与えるも、手刀が直に当るガツッという音だけしてノーダメージだ。


予想はしていたが、水の方はビシャっという音とともに水たまりが増えた。


のぞみは一応の警戒心は持ちながら、一度戻ってくる。


「ごめん。ボクの方の実験はとりあえず、これで。あとは防御用で考えたものがちょっとあるだけだから、ネタ切れだよ」


と言って、残った水を確認する。


おそらくは全員が予想していただろうが、「所詮は水」である。


打撃も、刺すことも、切ることも適わなかった。


やはり、攻撃手段が限られる。

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