表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
67/205

魔族との接触

 魔族、魔獣を倒しうる唯一の方法が魔法ということになれば、戦略が限定されてくる。


逆を言うと、打開策が見出されたとも言えるのではあるが。


今回のテラガルドの発言は、「魔法や罠以外で倒すことは難しいのか?」という提言と同義であった。


魔族と魔獣は、なぜか絶命すると宝石と化す。


メカニズムは全く不明だが、それがこの世界の理である。


これが、魔族や魔獣の討伐を困難にさせていた。


死体でもいいから手に入れば、その構造や強度などが検証でき、打倒しうる武器の開発や弱点の発見などもできるのだが、消えてしまうとなると、口伝による情報しか残らない。


長い歴史の中で、蓄積された情報を図鑑という形で情報共有し、その習性や特徴などを知り、限られた情報の中で対応していくことを余儀なくされている。





 今までは、人が見ていないときであっても、なるべく魔法の使用は避けてきた。


どこで情報が漏れるかも知れないということと、なるべくそれに頼らないことが大事だという認識からだ。


しかし、今回は魔獣ではなく、魔族である。


チカラを温存して勝てる相手とも思えない。


しかも、衆目にさらされた状態での戦闘というのが予想されるため、のぞみは確認を行なったのである。


プルミエ国の侵攻においても同様で、出し惜しみをする余力はないと感じている。


そろそろ、全面的に開放する時期がやってきているというのがのぞみの感覚だった。


琴葉隊一同は、今一度その覚悟を確認すると、森の奥へと進む。


「ねねっ。魔族ってどんなのが出るのかなぁ。わたし、リザードマンってのがみたいっ!」


と琴葉がはしゃいでいるが、それは水辺でしか発見されていない魔族である。


朝美はため息をついて、うるせぇなぁと言ってるが、最後は


「あたしは、どうせなら魔獣の最高峰、ドラゴンってのを倒したいけどな」


と、空中をジャブ、ストレートとワンツーコンビネーションで裂く。


間違っても、ドラゴンが素手のパンチで倒されることはないだろうが・・・・・・


一行は、まさか、自分たちが魔族と直接遭遇することになるとは思わず、談笑しながら森を進む。


「ピー、ピー、ピー」


と三度笛の音が聞こえるが、これは無事を知らせる定時報告である。


部隊同士、これが聞こえる程度に距離をあけて索敵を行なっている。


のぞみも、同様に三度笛を吹く。


「なかなか、魔族さん、みつからないね。飽きてきちゃったよ」


そう言って、琴葉はため息をつくが、


「百人の部隊が五つ、王さんとあたし達が索敵してんだ。確率的にあたし達が遭遇するわけねぇだろ。あたしたちは呼ばれたときに駆けつける係なんだから、よっと!」


台詞の最後に併せて、木々の枝を鉈で払う。


「ははは。あいかわらず、遭遇フラグみたいな台詞だね、朝美ちゃんは」


いつもは緊張感を解かないのぞみが珍しくツッコむ。


「なんか、前もそんなこと言って、魔獣を呼び込んだよね」


そういって、琴葉が朝美を指さして笑う。


皆で談笑し、少し開けた地へと踏み込んだときに、全員が戦慄を覚えることになる。


まだかろうじて日が沈まぬ夕焼けの中、テラガルドに匹敵する大きさの魔族が二体、大層な武器を担いでこちらを見ている。


テラガルドのそれよりも二回りも大きい石斧を担いでいる魔族と、人間の武器を奪ったのであろう、平凡な槍を持っている。


圧倒的な存在感に一瞬にして周囲の温度が下がった気がする。


のぞみは、本能的に一歩、二歩と後ずさる。


朝美は戦闘態勢を取ることも忘れ、一瞬立ち尽くしている。


テラガルドもまた恐怖を感じ、全身に無意識の震えが生じていた。


アス老人は冷静に物事を判断していたが、頬に伝わる冷や汗が顎に伝わるまでの間動けずにいた。


そして、フラハー王がティラドールを本陣に残したこと、最後まで琴葉隊の参加に反対したことを思いだし、納得する。


(今思えば、索敵する百人の部隊にも女性はおらなんだが、そういうことか。前回の魔族の生き残りの情報を具体的に話さなかった理由がわかったわい)


そう心で思い、少女達を見る。


「あーっ! オークだ! オークだよ、朝美ちゃん。間違いないよ、図鑑の巻末に載ってたもん。わぁーオークだぁ。初めて見たよ」


といって、騒いでいる馬鹿が一名いる。


多くの小説、漫画で描写され、もはや有名となっているオークである。


元は海の怪物として知られ、巨大で、鱗があって、牙と豚のような鼻を持っており、剛毛が生えていたとされる。


オークの鱗がどうしても刃物を通さなかったとの神話の記述がある。


しかし、現在では、同一の魔族なのか別のものかは定かではないが、「イノシシと豚と人間を掛け合わせたような鬼のような魔族」として確認されており、至る所で散見されている。


知能はあるものの、性欲が強く、人間を強姦目的でさらうことで知られ、女性の天敵とされることが多く、性欲の代名詞のように扱われる。


また、破壊欲求が非常に高く、殺戮も好む。


これらの特徴から、よく人里に現れるため、目撃例の多い種族と言えよう。


上位種とよばれる、指揮官クラスのオークジェネラル、魔法を使うオークメイジなどがいることも知られ、集団行動を取ることも確認されている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ