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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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臨時連合会議後の会議

 ウィッセン、ビーゼス、ヴィータの三国だけになると、終始沈黙していたヴィータの国王、バイゲンが何か言いたそうにする。


その様子を見て、すぐさまビーゼス国王エデュケールが機先を制して発言する。


「インゼル王、咄嗟に機転で貴殿に話を合わせましたが、これでよろしかったのでしょうかな?」


そう言って、インゼルに問いかける。


インゼルは先ほどの下手な態度を改め、いつもの尊大な態度に戻っていた。


「うむ。あの馬鹿な若造は、どうせ止めても戦争を止めん。何度やっても負けるだけだ。民の犠牲も計り知れんし、いくら単独といえどもオージュス連合国の看板の傷はゼロではない。何より、プルミエ国が滅べば、その領域にカンナグァ連邦が入り込むことだってないわけじゃあないんだ」


腕を組んで、ふんぞり返り、さきほどまで散々持ち上げていた「大王様」を「馬鹿な若造」呼ばわりしている。


「やはり、そういうことか。であれば、我々で派兵し、負けないくらいの戦力で侵攻するということですな。そのための派兵と」


エデュケールがそう真意を推測し、確認する。


「ああ。そうするしかないだろう。仮に負けたとしても、大敗はない。それに、我々の軍が敗戦の証人となっていれば、負けの言い訳もできまい。名目上はプルミエ国が主たる国になっており、我らは援軍なのだから、敗戦国は我らでなく、プルミエ国だ」


インゼルはため息をつきながら、ビーゼス、ヴィータの国王を見る。


「シーハーフはバラン王国と国境を持っており、今不審な動きをしていると聞く。派兵させるわけに行くまい。私の一存で会議を支配したことは謝るが、どうだろう。ここは我ら三国がプルミエ国にまとまった派兵をし、この状況に対応するというのは?」


エデュケールが最初に頷き、


「まぁ、仕方ありませんな。というより、それが一番良いと思う。よくぞ思い付いてくれたと感謝しよう」


そう述べると、ヴィータの国王も数秒思案し、深いため息をつくと、


「確かに。事後説明なのはともかく、それが最善じゃろう。わしもできる限りのことはしよう」


ヴィータ国王バイゲンも同意したのだった。


「お話中口を具申することをお許し下さい」


そう言って、国王同士の話し合いに黒騎士が入り込む。


三人の王の沈黙を承認とみなしたのか、黒騎士は言葉を発する。


「わがビーゼスは主力が騎兵。森の中への侵入はかなり犠牲が出ます。ゆえに派兵は厳しいと考えます」


それに対し、エデュケールは怒るわけでもなく、正論を述べる。


「しかし宰相、我が国だけ派兵しないわけには行くまい」


黒騎士は想定内だといわんばかりに、対応を述べる。


「仰るとおりです。従って、分配を考えてはいかがでしょうか? 我が国は二手に分け、一つは重装騎兵をシーハーフに派遣します。それによって、バラン王国の不審な動きに対応します。その代わりシーハーフには物資を要求します。そして、もう一つは弓騎兵をヴィータ国の警備兵として派兵します」


「なるほど」


エデュケールは相づちをうつ。


「ウィッセン国は重装歩兵をプルミエ侵攻部隊に援軍として派兵していただきます。重装騎兵はやはり森が厳しいため、プルミエ国の警備にあてていただきたい」


異論が出ないことを確認し、黒騎士は続ける。


「ヴィータ国は大変申し訳ないが、できうる最大限の派兵をプルミエ国にお願いしたい。森、あるいは森を抜けた後の平野で最も活躍するのは弓兵です。騎兵を有する我が国では厳しい。その代わり、我が国の弓騎兵で貴国を命にとしても守り抜くとお約束します。いかがでしょうか?」


インゼルはしばし思案した後、


「概ねでいうと、異論はない。異論はない・・・・・・。が、ビーゼスは警備兵としての派兵だけとなると、何もなければ一兵も失わぬ。しかし、我が国の重装歩兵、ヴィータ国の弓兵は戦場派兵。確実に被害が出る。ちょっと不平等ではないかな?」


異論はないといいつつ、しっかりと平等性は突いてくる。


そして、ヴィータ国王の方を向き、インゼル王は意見を問う。


「一番、被害が想定される貴国の意見はどうかな?」


バイゲンはしばし目をつぶり、考えた後、


「正直に聞くが、インゼル殿。お主は戦場で本当に戦うつもりか?」


そう言って、ニヤッと笑う。


インゼルは意を汲み取る。


「正直に言おう。派兵は本当にまとまった大軍を送り込む。戦うつもりはなくはない。ただ、援軍として同行した場合、主戦国であるプルミエ国、つまり大王様の指示に従わなくてはならない。これでは、我が国の兵が無駄死にするだけだ。適当なところで無理せず引き返し、敗戦の責任だけプルミエに押しつけるというのが現実だろうな」


インゼルは目をつぶったまま答える。


バイゲンもそれに応えるように、


「それが本音じゃろう。わしもそうじゃ。おそらくは戦場では何もせず、待機命令を出すことになろう。ただ、奇襲を受けたときのダメージは弓兵と重装歩兵では違うでの。森での行き来も然りじゃ。お主のところが大量派兵するのであれば、うちも合わせるが、実際の戦力としての期待はしないでもらいたい。それと、やはり不平等感は承服しかねるかの」


そう言って、バイゲンは黒騎士を見る。


「では、一番人的被害が出ると思われる貴国に対しては、我が国の騎馬500を提供するということでいかがでしょうか。それで帳尻あわせとしていただきたい」


黒騎士はエデュケールを一度見やるが、頷いてくれたため、国王として補償は同意してくれたようだ。


バイゲンはやはり数秒思案した結果、


「よかろう。では、弓兵を我が国から戦地へ送ることとする。ただ、先ほど申したとおり、戦地での働きは一切期待する出ないぞ。そういった指示を出しておくでな」


そう答えることによって、三国での取り決めが決まったのだった。


黒騎士が最後にまとめる。


「では、今後は私が責任もってプルミエ国との窓口に立ちます。今回参加しなかったシーハーフ国のフェウム女王にも伝えておきましょう」


インゼルは任せたぞとだけいって、会議室から出て行くのだった。

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