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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
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迎撃準備の会議にて

 戦場予定地である平野に着くと、すでに張られたキャンプに荷物をまとめる。


到着したのは夕方であったため、そのまま食事をとり、会議用の天幕へと集合する。


「避難訓練、ありがとうございました。多少の犠牲はでましたが、元よりリスクなしで避難はできません。こう言っては何ですが、住民危機感は増し、緊張感を保つためにも必要な犠牲だったと考えましょう。この経験が必ず生きてきます」


そういって、謙虚にフラハー王は琴葉隊に頭を下げる。


「いえいえ、とんでもないです。貴国の大切な国民をお守りできず、不甲斐ない思いです。発案者として責任を感じています」


代表してのぞみが謝意を示す。


実際は、琴葉隊が随伴したことで、魔獣を何度か撃退し、被害を最小限に食い止められたことは皆の知るところである。


随伴していなかった他のグループで死者が出たのであり、琴葉隊随伴グループからは出ていない。


一通り、社交辞令も済ますと、会議へと移行する。


「まず、人数ですが、こちらは三千用意できました。相手方が五千人以下の場合は撃退、殲滅を目的に戦闘を実施します。それ以上の場合は撤退を前提にして、ある程度交戦したのち、決められた国へ分散して撤退する。ここまではよろしいでしょうか?」


のぞみは一同を見渡し、異論がないことを確認する。


「基本的には、ボクらよりも多い人数で攻めてくることが想定されます。二千で攻めて敗北した事実があるわけですから、当然それ以上の戦力を投入してくるでしょう。おそらくは三千以上。なので、こちらは何らかの策や罠、兵科の有利をもって対抗しないと対応できない可能性があります」


そこまで言うと、王は確認を含めて口を挟む。


「具体的には、前回用いなかった騎馬と槍兵が、仰る「兵科の有利」ということでよろしいかな?」


のぞみは黙って頷き、話を続ける。


「これは、おそらく敵も同様だと思います。兵科の有利を狙い、騎馬は難しいにしても、槍は持ち込むでしょう。拠点構築のための木材なんかも持ち込むと思います」


森の中は狭く、馬が多量に侵入するのは難しい。


しかも、馬は臆病な動物なので、魔獣や野生動物の多く生息する森には入りたがらない。


平野での最強兵科である重装騎馬兵が運用できないのである。


対して、こちらは騎馬を千有しているが、今回は半数は避難用とし、軍用にはおよそ三百のみの運用に限定しようと事前に話し合っておいたのだ。


「なので、敵としては、重装歩兵、軽装歩兵、弓矢隊、工作兵、輜重隊がメインで、ひょっとしたら騎馬が混じるかもという感じでしょう。武器は槍が加わる感じです」


のぞみがまとめると、皆が一様に頷く。


「大将はおそらくは、王が出てくる可能性が高いかと考えています」


のぞみはそう言って、眼鏡を人差し指で擦り上げる。


今まで黙って頷いていたフラハー王とその側近、指揮官達はやや驚いた様子で聞き返す。


「王自らが、侵入してきますかね? 前回大敗しているのですぞ?」


そばらの指揮官は素直な疑問を口にする。


「そもそもの戦争の発端は、プルミエ国の若き新王が、そのチカラを見せつけんが為に起こしたと聞く。あっても不思議じゃないじゃろうなぁ」


そう言って、顎をさすりながらアス老人が回答するが、いまだ信じられないような面持ちで指揮官達にざわつきが残る。


「まぁ、誰でもいいんじゃねぇの? 来たヤツをぶっ倒せば・・・・・・」


そういって、行儀悪く椅子にふんぞり返っている朝美は興味なさげに言い放つ。


「今までのぞみ殿の仰ることで外れたことはないので、その可能性が高いのでしょう」


そう王は言い、皆は一様に納得した表情になる。


「やはり、前回の将軍、アインハイツは来ないでしょうか?」


王はのぞみに尋ねる。


「わからないです。道案内含め、帯同する可能性は否定できませんが、普通に考えて、敗戦の責任を問われ罷免されているというのが一般的ですから。・・・・・・ただ、他に有能な将がいないという人材不足な状況であれば、いてもおかしくはありません」


のぞみの返答に対し、王は「そうですか」とだけ答えると、話は陣地構築の話に移っていった。

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