第二部開始 前回までのあらすじ
第二部「第二次プルミエ国侵攻」の開始です。
第一部をしっかりと読んでくれた方はこれはあらすじだから飛ばしてもOKですよ。
読んでない人は、本家サイトで読んでいただくと、完全版なのでオススメです。
前回までのあらすじ
統一歴九九八年五月より開始されたオージュス連合国所属プルミエ国によるカンナグァ侵攻は、計五回の侵攻にも及ぶ。
しかし、最終的に七月のフラハー平野の会戦で、倍の数で対峙したにもかかわらず、歴史的大勝でカンナグァ連邦が撃退に成功したのであった。
侵攻したプルミエ国二千の兵に対し、生還したものは五百足らず。
かたや、半数の千で迎撃したカンナグァ連邦のフラハー国はわずか数十名の死傷者である。
大陸東方に位置し、国土の大半を森が占めるカンナグァ連邦、西に位置するオージュス連合国、そして南には絶対王政のバラン王国、そして、南東に自由都市国家群がひしめくこの大陸においては、侵略戦争が絶えない。
現在争っているオージュス連合国とカンナグァ連邦のいざこざも、昨日今日のことではなく、有史以来繰り返されてきたものである。
どちらも複数の国からなる連合体であり、一つの国であると同時に、各国の自治が認められているため、同盟国といった意味合いの方がしっくりくるものではある。
しかし、領土、とりわけ森に対する愛着から、神聖領域を守るという共通意識の元、カンナグァ連邦の結束は固い。
地の利を生かして、何度となく侵略を阻み、多少の領土の増減はあったにせよ、最終的に今の領域を死守できている。
オージュス連合は大陸の東端にたどり着いたことはなく、未だ大陸の東西連結という覇業を成し遂げたことはない。
それだけ天然の要害は厳しい壁となってオージュス連合国の前に立ちはだかっている。
先の侵攻はオージュス連合の全戦力を投じた戦いではなく、プルミエ国単独でのものである。
迎撃もまた、フラハー国が中心となったものであり、カンナグァ連邦の全力ではない。
しかし、この侵攻があった前は八年前に千人規模の侵攻があった以来であり、その前は十数年前である。
この数年侵攻がなかったため、カンナグァ連邦は警戒し、開戦の兆しを感じ取ると、中心国のエムエールより特派を前線に送り込む。
大陸東端に位置するエムエールはカンナグァ連邦における最も中心的役割を担う。
士官学校の校長でもあるアシムの推薦を受け、のぞみという眼鏡の少女とアスという先日まで士官学校で教鞭を取っていた退役軍人が選任される。
のぞみは仲の良い友人である朝美と琴葉をメンバーに引入れ、アス老人はテラガルドという巨躯の男を引入れる。
五名のパーティが編成されると、国境付近のホルツホックへと派遣されるのであった。
隊長は琴葉という少女が務め、琴葉隊と称し、国防の中心的役割を果たしていく。
こうして、琴葉隊と連携を取ったホルツホック国、フラハー国は見事プルミエ国の侵攻を食い止めたのだった。
特に、戦史に残る大勝を収めた平野での開戦は、事前の練兵、訓練と、類い希なる指揮、用兵術があってのことであり、大きく評価されることとなる。
五度にわたる一連の侵攻を「第一次プルミエ侵攻」と後の世で呼ばれることになるのだが、その言葉からもわかるように、「第二次プルミエ侵攻」と呼ばれる戦いがある。
今回はそれにまつわる物語である。
第一次プルミエ侵攻において、プルミエ国の全戦力が五千に及ぶと知った琴葉隊は、まだプルミエ国に余力があることを知る。
森に侵入してきたのが二千の兵であるからだ。
戦争に投下できる戦力が五千なのか、防衛や哨戒含め五千であるのかは大きく異なる。
後者であれば、実際に侵攻に使える兵はおよそ半数くらいであり、二千から三千であろう。
その場合は、今回の侵攻で壊滅的打撃を受けたことになり、オージュス連合国の他国の協力がない限りは、プルミエ国単独の侵攻は数年間考えにくい。
しかし、前者であれば、まだ三千の兵がいる。
琴葉隊は、それを見越した上で、第一次プルミエ侵攻で戦力と情報の出し惜しみをし、伏線を張っていく。
第二次があると見越した行動をしていたのであった。
準備を粛々としていく琴葉隊にたいし、オージュス連邦内では、戦争を操るビーゼス国の宰相、「黒騎士」が暗躍する。




