訓練を見て
訓練の内容によっては、罠を設置したり、策を弄することも提案してみようという話になった。
全く聞く耳を持たないような王ではないだろうということと、そういったことで腹を立てるような人にも見えなかったというのが理由である。
正面からぶつかって、勝てるのであったとしても、被害は最小限にとどめるべきだ。
バカ正直につっこむだけが戦争ではない。
少しでも勝率を上げ、死傷者を減らすことは決して卑怯でも何でも無い。
ちょうど午後の休憩が終わった後だったのであろう。
戦場予定地に到着すると、既に訓練は行なわれていた。
おそらくは基礎訓練といわれるものだと思うが、様々な号令や旗、矢とともに隊列変更や陣形構築などを反復して行なっている。
至極簡単なように見えるが、実際にやってみると非常に難しい。
千人が同時に十歩前に出る。号令とともに向きを変えずに十歩横に移動する。
これができるというのは何度も繰り返し練兵が必要なのだ。
例えるならば、大縄跳びを考えると良いのだが、各自が二十回飛ぶことができても、全員集まると三回目あたりで誰かが失敗するのに似ているかも知れない。
同調させるというのはそれほど困難であり、誰か一人が転んだら、ドミノ倒しのように兵が倒れ、次々と覆い被さったりして圧死することも大いにあり得るのだ。
混戦となればまた話は違うのだが、隊列を組むというのはそういうことである。
一糸乱れぬ行軍とはまさにこのことをいっており、軍としての質の高さが伺えた。
これを見ただけで正攻法での迎撃に自信を持つことにもうなずける。
編成としては、百人を最小単位とし、百人将と補佐二人、それが集まって五百人将と補佐二人。以下、千人も同様。
総勢で五千人となっていた。
近隣で哨戒業務を行なっていたり、立哨、防衛などの人員はわからないが、およそ五千人の兵というのがこの国の全戦力と言って良いだろう。
通常の軍隊としての生活は、五人一組で十人、百人となるが、こういった大規模戦では再編成されることが多い。
とはいえ、宿舎や砦、町に戻ればいつもの編成になるのだが。
騎馬が千、弓が千、重装歩兵が千、軽装歩兵が二千といったところだろうか。
工作兵や輜重隊などは軽装歩兵に含むが。
騎馬が千も存在するというのがチートと言える。
森を進軍する時は、木々が邪魔ゆえに大物の武器は使用が困難であり、その地形や魔獣の存在から馬は立ち入るのが至難である。
必然的に、敵の多くは軽装歩兵であり、重装歩兵、弓兵が少数混じる程度である。
従って、自然と編成は軽装歩兵が中心となることが予想される。
つまり、兵科の相性で、騎兵は優位に立てるのだ。
ただでさえ、マックス五千人を動員でき、おそらく数の上でも優位に立てる上、準備をできる防衛戦である。
戦闘地はこちらが選べているのだ。
負ける要素が少ない。




