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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
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フラハー到着

 琴葉達は、馬車の中で聞いた説明と、前もってあった知識を全員で共有する。


できれば防衛作戦をしっかりとやった方が良いと思うのだが、フラハー国の信条を刺激するのは良くないだろうと言うことになり、相手の出方に従うという方針にしたのだった。


国の性格上、罠を仕掛けるということはあまりしていないと思うが、念のため平野部での散策は避ける。


平野部を一直線に抜け、森を少し進んでいくと、要塞のような建物を発見する。


北には大きな山があり、要塞の南側だけやや開けている。


城塞はかなり大きく、城壁には何人かの兵が監視で立っていた。


立哨業務一つとっても、隙は無く、自分たちが国防を担っているという自負が見受けられた。


たった一つの、大きな門の横に立つ兵士に話しかけ、身分と目的を伝えると、城壁の上の兵士に大きな声で伝えると、しばらくして城壁より縄ばしごを下ろされた。


どうやら、門は開けないらしい。


用心深いといえば用心深いが、何のための門だかよくわからない。





 琴葉は、縄ばしごが下ろされると、


「門番の人、わたしのパンツ見上げようとしたりしないかな」


などと、ブツブツ言い、いつも通り最後にはしごを登る。


その際、何度か下を警戒して振り返るが、門番は皆正面を警戒し、当然のように振り返って見上げるマネはしない。


登り切った後に、


「なんなの!あの門番。超絶美少女が短いスカートはいてハシゴ上ってんだから、チラ見しようと振り返れよっ」


と、見られないことになぜか不満を言っている。


のぞみはそんな琴葉をなだめながら、城壁を階段で降りていくのだった。


武器や荷物は城壁の外の門番に預け、後で受け取ることになっているところが、逆に安心できる。





 外からの城壁の大きさ、砦の大きさから想像はしていたが、簡易ながら城壁内は都市となっており、文字通りの城塞都市であることがわかった。


現代のスペインにあるアビラといえばわかるだろうか。


城壁は十メートルに満たないかもしれないが、百メートルおきくらいに塔のような出っ張りがあり、立哨している兵が確認できる。


この城塞が正方形であったとするなれば、一キロ四方といったところであろう。


実際には北部は山になっているため、コの字になっているのだが。


中は最大で二階建てくらいの建物がほとんどであり、本当に町そのものであった。


一番奥まで進むが、途中、中央部と思われる位置で広場のようになっており、区画分けがキチンとされていることが理解できる。


そろそろ日が沈む時間帯ということもあり、最奥の建物に到達すると、そこが王宮ということなのだろうか、客間に通された。


鎧を纏った兵士が現れ、


「事情は全て承知しております。ホルツホックよりの使者からも連絡がありましたので。今日はもう遅いですし、本日はこちらでお休みください。明日の朝、一番に王にお目通りいただき、今後のことも含めてお話をされると良いと思います」


そういって、世話係と思われる女性が三名、男性が二名現れ、各自挨拶する。


琴葉達の五人それぞれ専属で世話係がつくという国賓待遇で迎えられたのだった。


部屋も人数分用意されたが、一度アス老人の部屋へ集まることにしたのだが、まもなく食事を用意するとのことで、集まったため、そこで食事をしながらの話し合いとなったのだった。





 琴葉は基本的に肉を食べないので、器用に箸ではじきながら、朝美とのぞみに振り分けていく。


よそ者と煙たがられたりするのかと思っていたので、良い意味で予想を裏切られ、嬉しかった。


あまりにも色々と待遇が良かったため、とりあえず、明日の朝に王に会い、それから考えようと先延ばしにし、久しぶりの安息を味わったのだった。


木上での生活も決して悪くはなかった。


食事もあったし、水浴びもできたし、ベッドもあった。


だが、石造りの部屋、城壁という守られている安心感は別格だった。


しばらくは、ここを拠点で利用してくださいとのことだったので、一度没収された荷物を受け取った際に、各自の荷物を部屋に振り分ける。


琴葉は寝る前に「魔獣図鑑」か「植物図鑑」、「動物図鑑」のいずれかを読もうと荷物から出し、フィーリングで魔獣図鑑を読んでるうちに自然と眠りについていた。

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