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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
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ごっこ遊びの報告と後の方針

 小屋に戻ると、琴葉が急にビクついた顔をするが、朝美は微笑んで、


「もう怒ってはいないよ。久しぶりに童心に返ったみたいで楽しかったよ。子供達も喜んでたしな。むしろ、ありがとう」


本当はそう言いたかったのだが、さすがに気恥ずかしくて言えず、琴葉から目を反らす。


アス老人は朝美の方を見ると、


「おい、嬢ちゃん。自分が遊びたいからって子供達に変な遊びを吹き込んじゃダメじゃろうが!」


と真顔で言うが、笑いを堪えられなかったのか、口元がゆがんでいる。


テラガルドですら、うつむいて笑いを必死に堪えており、肩が震えているのがわかる。


どうやら、ここでも朝美が発案したことにして話を広げていたようだった。


「琴葉~!!!!!」


朝美は眉間にしわを寄せ、こめかみに青筋を立てながら琴葉にげんこつを落とし、締め上げる。


当人以外は笑っているが、ひとしきり笑うと、二人を放って話を進める。


「本日の族長さんとの話ですが、ボクたちは戦争開始から数日でここを離脱。フラハー国へ移動することになりました。とりあえず、初戦の相手の出方を確認して、予想外の動きでない限りは、初戦の情報をもって、フラハーへ。その後はフラハー指揮下で動くように、と。すでに侵略に対する協力は取り付けてあるようだから、そこは大丈夫みたい」


何となく、予想はしていたので、ある程度は納得だ。


罠や上からの迎撃というような王道を実施するしかない状況では、地上での囮や暗殺以外の役割はあまりないと思っていたのだ。


加えて、フラハー側の領域の探索を許可されていたことも、十分に納得するものであった。


一同は、了解の意思を示す。


「しかし、戦力として期待されていないわけではないだろうし、信頼関係もそれなりに構築できたと思うんだけどなぁ」


朝美はそういうと、何となく感じている情報の秘匿とたらい回し感への不平を口に出す。


腋にはヘッドロックで固定された状態の琴葉がいるが。


「おそらくですが、戦線が急激に変化しない限りは、ボクたちは二つの国を行き来することになるんじゃないのかなぁ」


のぞみが口にすると、アス老人も頷く。


「おそらくはそうじゃろうなぁ。遊撃隊として使うんであれば、ある程度臨機応変な我々の方がよいじゃろ。それに二つの国を行き来できる信頼性がえられたと前向きに捉えた方がよいじゃろな」


「確かに。伝令として仮に捕まっても、どっちの情報も持ってないからリスクも低いしな」


皮肉も込めて、朝美が言い放つ。


今は後ろからスリーパーホールドで琴葉を締め上げているが。


「とりあえず、ボクたちは木上での移動制限があるから仕方ないよね。罠が張られまくった森の中じゃ、地上での囮もしづらいし、何よりも木上への待避ができないよ」


我々はかぎ爪をつけないと、やはり十メートル以上の木上に待避するのは困難だった。


正確に言うと、かぎ爪をつけても単独での待避は厳しい。


あまり役には立たない可能性は高い。


「とにかく、戦闘開始からしばらくまではいれるわけだし、ボクたちは指示に従う以外はないわけだから、準備だけしておこう」


そういってのぞみが打ち切る頃までには、琴葉は伸びきっていた。

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