今後の所属
「んー。でも、サボり気味で成績はそれほど良くなかったクロノさんは何で衛生科に転科できたんだろうね。ボクが知る限りでは、確かそれ以前に特例は聞いたことがなかったから、クロノさんが初だよね?」
のぞみは入学以前から、特待生優遇による兵卒科から仕官科への特別編入を狙っていたため、事前にそういった特例や前例などを調べていたのだ。
「んー。よくわかんない。でも、わたしが強制転科で衛生科に入れるって話を校長先生からされたときに、前例がいるって。それがクロノさんだったんだけど、やっぱり魔法科だったけど、強制転科だったみたいだよ」
琴葉は校長室でアシムから衛生科への転科を打診されたときの説明を思い出す。
「ふーん。じゃあ、やっぱ、あのオバサンと揉めたんじゃねぇの?」
朝美は笑っているが、それ以上のことはわからなかった。
六時間ほど歩き、平野に抜けると、あらかじめ割り当てられているキャンプテントへと行く。
案内されると、ものの見事に一番端っこである。
本来であれば、中央の会議とかが行なわれる天幕の近くだと思うのだが、すでにマータの話を聞いているのだろう。
間違って出会ってしまう可能性を低くするために一番遠くに追いやられたのがわかる。
一行は顔を見合わせ、大きなため息をつくと、荷物を運び込む。
「なぁ、あたしたちって、軍属になるのか?」
荷物を整理しながら、朝美はのぞみに聞く。
「卒業直前に依頼された案件だから、正確にはまだ軍属じゃないよ。ただ、この任務に一区切りが就いたら、軍属になると思う」
「そうだよね~。卒業直前に、『任意』で特派に『依頼』されたんだもん」
琴葉も今回の案件までは、学生というか、一国民として依頼を受けたという認識を示す。
「国を守るために戦うのは望むところなんだけどさぁ。あんな上司にあたらないとも限らねぇだろ? ま、どんな仕事もそんなもんだって言えば、そんなもんなんだろうけどさ」
朝美の言わんとしていることはわかるようで、琴葉も同調する。
「ん・・・・・・ まあ、それで死ぬのはわたしたちだからね。変な指示で無駄死には嫌だよね」
「だよなぁ」




