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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第四部-フラハー陥落
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アッサーラ隊

 森を抜ける道中は、マータ達の話になる。


昨日、アス老人からマータに関する情報を遅ればせながら聞いたのだ。


「しっかし、あのババァ、人間性腐ってんなぁ。とりあえず、魔法の話と不倫の話、それと教授とかの地位だけは言わないようにってことだろ?」


朝美は面倒臭そうに言い放つ。


「うん。まぁ、それ以外にも機嫌を損なうようなことは避けた方が良いと思うけどね。マータ先生は評議会の使者として来てるわけだし。ボクらの今後の活動はマータ先生次第だから」


のぞみは苦笑いし、右の頬を人差し指でポリポリと搔く。


「アスじーちゃんが仲良しだって言ってたから、任せるしかないよね。わたし、無理だもん、あのオバサン」


琴葉もマータの顔を思い浮かべながら、苦い顔をする。





「アッサーラ隊って前回の任務でメンバーに死亡者出したって話だったけどさ、あのババァの指揮下だったら、やっぱしょーがねぇよなぁ・・・・・・」


「わたし、亡くなった人、知ってるけど、多分、あのオバサンの下じゃなきゃ死なないと思うんだよね。アタマ良かったもん」


琴葉は思い返す。


「そうか、アッサーラ先輩はボクが知ってるし、テイザン先輩は朝美ちゃんが知ってて、琴葉ちゃんはその先輩を知ってるってことか。在学年が一年かぶってるから・・・・・・」





 厳密に言うと、のぞみ達三人は当時まだ一般教育課程の一年生であり、まだ専科に別れる前なので、在学年がかぶっているとは言え、接点はない。


ただ、自分が進みたい専科については意識して先輩をみるため、直接的な接点がなくても顔と名前を覚えていることがある。


特にアッサーラ隊は琴葉隊と同じく在学中にすでに任務を経験させられるような特別な位置にいたため、名前くらいは知れ渡っていた。





「あたしは、アッサーラ先輩以外はたぶん、全員知ってるぜ。兵卒科の先輩でテイザン先輩、死んだっていうタクソケール先輩、あとは何科か忘れたけど、クロノ先輩だろ? あの銀色の髪の毛の・・・・・・」


朝美は自分の髪の色が赤く、特殊な存在ではあるが、自分よりももっと特殊な銀髪で長いストレートの髪を持つクロノをよく覚えていた。


といっても、銀色の長い髪をした男など、たとえ同じ課でなくても学内にいれば目立ち、一度見れば誰でも覚えているのだが、学校をサボり気味で、たまにしか来ないため、知らないものも多くいた。


加えて、同じ兵卒科で、しかも同じく風の魔法の使い手であるテイザンのこともよく覚えていた。


さらには、よく一緒にいたということもあり、タクソケールのことも覚えている。


気さくで、人当たりが良く、人気者だったことは記憶にある。


朝美は自分が知ってる範囲のことを伝えると、琴葉が追加説明をする。


「クロノさんは、衛生科だったんだよ。わたしの先輩。サボり気味だったし、成績は良くなかったと思うけど、わたしと同じで特例で転科したんだよ」


朝美はそれを聞いて、懐疑的な眼差しを向ける。


「琴葉と同じってことは、なんかやらかしたってことじゃねぇか!」


「むむ~! わたしは成績優秀だから転科できたの!」


ほっぺたを膨らませて、否定しているが、事実である。


一部の実技系のものを除き、学科系の科目は意外だが全て一位を取っており、のぞみは二位になっている。


人間性、社会性などや生活態度も加味され、のぞみは特待生となり、本来は卒業しないとは入れない仕官科に編入できたのだが、琴葉も成績だけでみればのぞみよりも上位なのだ。


よく、「勉強ができる馬鹿」とか、「回転は速いが、軸がズレている」などと評されていた。


のぞみが秀才ならば、琴葉は奇才だろう。


奇妙の意味合いを込めて、だが。


問題行動のせいで特待生にはなれなかったが、琴葉が衛生科に転科できたのは実際に学業が優秀だったことが大きく寄与している。


ちなみに、言うまでもないことだが、朝美は実技系は全て「優」だが、学科系は見るも無惨である。

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