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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第四部-フラハー陥落
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カンナグァの方針と体制

「オージュス連合は今度こそ本当に全力で攻めてくる。間違いないわ」





 何の根拠があるのかはさっぱりわからなかったが、エムエール国からの使者であるマータより、会議に参加している面々に対して断定的に発せられる台詞が今後の方針を決定づけさせる。


エムエール国のニーベンストランドにある評議会は、カンナグァ連邦における最高の意志決定機関であり、そこで使者として正式に任命されている以上、マータの決定は絶対である。


そのマータが侵攻が再度行なわれてくると断言した以上、それを前提として迎撃準備を行なう必要がある。





 会議に参加しているほとんどのものは、マータの発言の信憑性、根拠については口にしないが、これはこの数日のうちでマータに分析能力が無いと言うことがわかっているからである。


また、アス老人がマータに対して積極的にそのように刷り込みをし、そうなるように仕向けたことを全員が知っている。


ゆえに、この発言自体は既定路線であり、皆が望んだ結果でもある。





「なるほど、マータ殿が仰るのであれば、間違いないでしょう」


フラハー王がにこやかに微笑み、持ち上げる。


「いやぁ、さすがですな。その決断力、分析力はエイザム士官学校で教鞭を執られるだけのことはある」


アンダールも拍手と満面の笑顔で称える。


「うむ。情勢を見極める目は畏敬の念を覚えます」


いつもは寡黙なシークンドすらも賛辞する。





 対して、余計なことは言うまいと、沈黙を保持しているのがスパツェロ、ティラドール、ポシュエ、のぞみ、テラガルドであり、冷ややかな目で見ているのは朝美と琴葉である。


指揮官の総力を結集し、マータを持ち上げ、感情を逆なでしないように細心の注意を払う。


もっとも目の敵になっている琴葉と朝美は絶対に発言禁止を言い渡されており、うつむいて顔を上げるなと指示をされていた。


終始マータのご機嫌取りに徹底した配慮がなされ、無事に会議が終わる。





「では、使者としての役目も果たされたことですし、明日の朝にはエムエール国へ戻られるのですか。寂しくなります」


フラハー王が寂しそうな表情でマータに話しかける。


「一度本国に戻り、状況次第では、アッサーラくんとテイザンくんがまたこちらにお世話になるかも知れませんわ」


マータも寂しそうに笑顔を浮かべ、今後について述べる。


「前回の任務で隊員を失っちゃったから、補充が上手くいけばヘスに派遣される可能性があると聞いてるの。私もその時に来れるといいのだけれども・・・・・・」


一同は苦笑いをするが、当人はにこやかにしていることを見るに、気付いていないと思われる。





 実際に、ヘス国に派遣されることは十分にありうることであろう。


しかし、再開を楽しみにしている人はほぼいないと思われた。


この一週間、初日は確かに琴葉と朝美が怒らせたのはあると思うが、以降はマータ自身の人間性が露見することとなった。


権威を振りかざすが、実際の能力は残念ながら伴わない。


挙げ句、癇癪持ちなのか、常にちょっとしたことで感情的になり、辺り構わず怒鳴り散らしたりと人間性を疑うこともしばしば起きたのだ。


その度にアッサーラとアス老人が何とか機嫌を取りなし、フラハー王とアンダールによって丸く収められるということが幾度となく繰り返される。


それでも、ニーベンストランドの評議会から使わされた使者であるというのは大きく、周囲は翻弄されることとなったのである。





 訓練に参加したアッサーラとテイザンはその能力を発揮し、すぐに実力を認められることとなったが、マータの実力の片鱗をみたものはいない。





 テイザンは常に不機嫌で、横柄、乱暴者といった性格に難があったが、類い希なる戦闘力で、誰しもが閉口することとなったのである。


ある程度の重量がある手斧を投擲し、抜群の破壊力を誇る。


持ち前の好戦的で残虐な性格もあり、非常に高い戦闘力が示された。


実際にはちょっとした付加効果しかないのだが、風の魔法使いであることを隠さず、追い風効果を発生させるので、精神的なプレッシャーも大きい。


魔法使いとしての能力は下の下だが、ただ使えるということをアピールするだけでも十分に威圧効果は示せたのだった。


悪いやつでは無いということが軍に伝わるのは早かったため、打ち解けるものも多く出た。





 アッサーラはのぞみと能力的なキャラ被りが強く、仕官科卒だけあって、指揮能力が高い。


用兵術もそれなりで、のぞみほどの優等生ではないが、感覚的なものを取り入れたり、コミュニケーション能力の高さで違った味を出していた。


良い意味で適当なところが、結果に結びついており、効率的といえた。


マータのメイン担当として、とにかく機嫌を取ることが上手かったため、一番感謝を集めた人物と言えるだろう。


そういう意味では、指揮能力よりも、人心掌握術に長けた人物と評することもできる。


誰とでも打ち解け、仲良くしていたため、仕事を頼んだり押しつけたりするのが得意であったが、当の本人の事務処理能力が低いのもカバーできている。


典型的な上官タイプの人物で、隊長として適任だといえよう。

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