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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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ヴィータ国移譲の承認

「もし、侵略、占拠などの武力による制圧を理由とするのであれば、我がプルミエ国は反対に票を投じます。今はオージュス連合が一つになって、カンナグァ連邦に対峙する重要な時期。そうでなくても、内輪での争いはあってはなりません。我々は一つでオージュス連合国という国なのです。しかし、あくまでもバイゲン王自らの意志で統治権を移譲したいということであれば、反対する理由もありません。ヴィータ国は後継者がいないという問題も抱えておりましたので、むしろ正当な理由たり得ましょう。支持します。ただ、内政に干渉するつもりはありませんが、ヴィータ国民にとってウィッセン国本国と差別があるようであれば、承認後も再審議にかけたいと思います」


わずか十七歳の少女が堂々と会議の場で意見をしたのである。


シーハーフ国のフェウム女王もこれには黙るしか無かったようで、大きな反対意見を言うことができず、全員一致での承認となった。


後ろで控えていたエルドス近衛兵長もアインハイツ将軍も驚いているようだったので、事前に決めていたことでは無かったのだろう。


無論、バイゲン王の出席と発言に関しては事前にキミュケールが仕組んだものであったが、すでにバイゲン王自体も諦めていたのが大きい。


移民と同時に連れてこられたバイゲン王は、幽閉というよりは、内政顧問としてビーゼスの政治の相談役となっており、エデュケール国王と話しながら、充実した生活を送っていた。


同じ境遇となってしまった王同士、口論をしながらも仲良くやっている。


時にプルミエ国の内情を黒騎士から聞き、アドバイスを送るなど、プルミエ国の内政にも遠隔で影響を与えており、本人も今の生活を気に入っているようだった。


今更王に戻る気もないようで、積極的に協力してくれている。


あまりにも有能なので、適任者不在となっているプルミエ国の宰相なども本気で考えたのだが、さすがにまずいだろうと却下したくらいである。





 最初はフォウ王女に対して何かしら働きかけをしようという意見も出たのであるが、現段階では不要と判断し、黒騎士らは何も策を弄しなかった。


あとでエルドス近衛兵長に確認したのだが、エルドス近衛兵長も何もしなかったとのことなので、フォウ女王の真の意志と言えよう。


想像以上にあっさりと臨時会議は終わり、フォウ女王のお披露目も終わる。


ウィッセン国が人口問題を抱えていたことから、移民についても特に問題視されず、元より物資等の移動は露見していない。


全てが合法的に処理されたのだった。


フェウム女王は思うところがあったようだが、フォウ女王の発言で、四面楚歌ではないと悟ると、ひとまずは引くことを第一としたようである。

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