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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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有能な人材の発掘、コネクション作り

 あとでヴィータ国の政務官に聞いた話では、ウィッセン国では人口爆発が起きており、単純に大陸に土地が欲しいという野望以上に土地が欲しいようであった。


実際には、ヴィータ国は農地が多く、街を形成するだけの遊閑地はない。


若干城下町を拡張するのが限界であろうが、その分、湿地帯前の平野を失うことになり、防御面での不安が増すこととなる。


なお、情報源となった政務官はすでにキミュケールと関係を築いており、何人かの政務官や街の有力者、商人などとわずか一週間のうちに秘密裏にコネクションを作るキミュケールのコミュニケーション能力には脱帽である。


黒騎士も、会議の時の反応で、何人かに目星を付け、街の有力者二名、弓隊の指揮官二名と接点を持っていたのであった。


街の有力者からは豪商三名を紹介してもらうことに成功し、二名には移住の約束を取り付けた。


弓隊の指揮官二名は先の説明会の際に、動じていなかったのと、何となくの直感で有能さを感じたからである。


実際の弓矢の腕前は不明だが、少なくとも上に立つものの資質は持っていそうだった。


その日の午前のうちに話を持ったのだった。





「ビーゼス国宰相、黒騎士である。兜を取っての挨拶ができず無礼をお許し願いたい」


対座するのは、先の会議で目を付けた二名の指揮官である。


「ヴィータ国弓矢隊指揮官のロセットと申します」


「同じくコーカルドと申します」


呼び出された二人の指揮官は、立って挨拶をすると、席に座る。


「移譲宣言後に間髪入れずに申し訳ない。二人に軍の現況を教えてもらいたい」


黒騎士は、この後の仕事もあると思われるのに呼び止めたことを詫びる。


二人は顔を見合わせ、ロセットと名乗る方が述べる。


「バイゲン王の方針で、我が軍には将軍がおりません。飛び抜けた個の戦力に依存しても戦局は変わらず、大事なのは集団としての戦力であるというのが信条だからと聞いております」


「ほほう。バイゲン王らしいな。内政の手腕も見事だと感じていたが、軍でも同じらしい」


お世辞でなく、黒騎士はそう思っていた。


ビーゼス国も宰相というポジションは黒騎士以前無かったわけだが、それはエデュケール王が一人で政務を取り仕切っていたからであり、独裁的ゆえである。


仮にエデュケール王が急逝したら、しばらくは内政は混乱を極めるだろう。


しかし、バイゲン王は逆だ。


確かに宰相もおらず、将軍もいないが、決して独裁ではなく、高官達で回るような仕組み、体制を構築している。


結果として部下の能力は突出はしないまでもかなり高い平均値を叩き出し、自主性、自立性がある。


バイゲン王の性格もあって、そこに慎重さが加わっているため、リスクヘッジが効いているのだろう。


言い方は悪いが、「誰が死んでも回る仕組み」ができている。





コーカルドも加える。


「武器についてもカスタマイズなどは原則禁止となっており、全て規格品となります。旧式、中古品は新兵や練習用に配られますが、基本的には統一規格のものが用いられます。今回の出兵で、旧式、中古品は放出しましたので、よりその傾向は固まったかと思われます」


「統率が取れているのは良いことだ。派兵の際は私も顔ぶれを拝見した。失礼だが、問題児や練度の低いものが集められたようだな?」


ロセットが悪びれもせずに答える。


「はい。我が国は日頃から多くの兵を抱えております。弓矢には鍛錬が必要ですから、一朝一夕では戦力にはなりませんので。ただ、良くも悪くも配給が出ますので、ろくでなしやごろつきなどが仕官することもあります。農家の六男坊などもそうです。従って、どうしても下はそういったものがおり、それが今回派兵に回された様です」


「だろうな。言い方は悪いが、体よく始末した感がある。死んでも構わないものを派兵したと言ってもいい」


二人は沈黙する。


それが肯定を意味していることは聞かずとも察しが付く。

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