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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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今後の統治方針を表明

 一夜明け、ウィッセン国、ビーゼス国、ヴィータ国の主立った面々が王城の王の間に集まる。


拘束されたバイゲン王もまた同席する。


「さて、この二、三日間でご存じだと思うが、ビーゼスによって、ヴィータは占拠させてもらった。ただいまを持って、それをウィッセンに委譲する。つまり、ヴィータ国はウィッセン国に併合される、あるいは支配下に置かれると言うことだ。協議の結果、バイゲン王の身柄はビーゼスで預かることとなった。何不自由ない安寧を約束しよう。加えて、重大な発表がある。ヴィータ国の兵とその家族を全員ビーゼスに移住させる」


キミュケールが開催の挨拶もなく、そこまで言うと、ヴィータ国の高官、有力者からはどよめきが上がる。


「それは、バラン王国のように、奴隷として扱うと言うことか!」


兵の指揮官と思われる者が机を叩き、立ち上がる。


キミュケールがバラン王国に留学に行っていたことは周知の事実である。


奴隷制度が有名なバラン王国と関連付けて考えられるのは至極当然のことである。


「いえ、誤解無きよう。むしろ保護とお考え下さい。ウィッセン国の前で言うのも何ですが、ウィッセン国はプライドが高く、それは兵にも現れております。軽装歩兵、輜重隊、工兵、弓矢隊は明らかに重装兵よりも下位に見られましょう。差別的な扱いを受ける可能性は十分にある。しかも、占領した国の兵です。加えて、武装蜂起して反乱を起こしたり、再興を願う者の影響を受けかねない。であれば、早期に弾圧、粛正される可能性だってあるのです」


黒騎士がそこまで言うと、ざわめきが一層大きくなり、アドランデ将軍に対して厳しい眼差しが注がれる。


しかし、アドランデ将軍も不敵な笑みを浮かべるだけで否定しない。


その無言が、肯定と捉えられ、一層眼差しが憎しみを籠もったものに代わる。


(この段階になって、ようやく慌てるなんて、ヴィータ国の兵は頭の中がお花畑にでもなってるんじゃないか?)


黒騎士はそう思いつつも、場に視線を走らせる。


(まだバイゲン王はだんまりか。街の有力者で落ち着いているものが数名。高官では、政務官は意外と顔を見ると何とか平気そうか。軍部は二名だけだな)


政務官は有能そうであることを確認し、まずは安心する。


やはりヴィータ国はオージュス連合の台所事情に関わってくるので、政務、特に農業と内陸貿易に関してだけはしっかりとしてもらわないと困る。





「異国の地に家族ごと連れて行かれることに不安はあるだろう。しかし、ビーゼス国での今と変わらないレベルでの待遇はお約束しよう。すでに住居も用意している。この地で迫害を受ける、あるいは弾圧を受けるなどの危険性を危惧するくらいなら、我が国で手厚い保護を受けた方が良い。どうしてもと言うのなら無理は言わないが・・・・・・」


黒騎士はそういって、押し黙ると、立ち上がった兵も、とりあえず着席する。


しばし沈黙が流れるが、事前にお願いしてあったとおり、アドランデ将軍が動く。


「先の黒騎士宰相の言だが、私としては否定しない。我が王は反乱分子は容赦なく摘めと言っていたからな。出て行ってくれるのならば追わん。ただ、残るのであれば、相応の覚悟はしてもらう。ウィッセン国は連座制を取っているでな。罪人が出た場合は家族もまた同罪となる。国家内乱罪は死罪だ」


腕を組んだまま、冷静に言い放つ。


息を飲む声が聞こえそうな程の静寂が場を支配する。


「まぁ、そういうわけだから、僕らの国に来てもらおうと言うことになった。黒騎士宰相が言っていたように、無理にとは言わないけどね。家は無理だけど、財産の持ち出し、持ち込みも認めている」


キミュケールの言に反意を示すものはもういない。

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