バイゲン王の処遇
黒騎士はバイゲン王への興味が失せ、最後に一言だけ聞く。
「明日になれば、ウィッセン国アドランデ将軍が来ます。その時にヴィータ国を明け渡すことになります。バイゲン王の今後についてもそこで話し合われるでしょう。何か、希望があれば聞いておきたいと思いますが、何かございますか?」
王は思案し、答える。
「ウィッセン国に何かされるぐらいなら、死んだ方がマシじゃ。ひと思いに殺せ」
睨むように黒騎士をみるが、黒騎士は動じない。
キミュケールが代わりに返答する。
「あくまでも希望として受け止めておくよ。では!」
踵を返し、黒騎士の肩を叩くと、出口に向かって歩いて行く。
キミュケールもまた興味が失せたのだろう。
扉を開けると同時に、火時計が仕掛けによって銅鑼をならし、一時間の経過を伝える。
キミュケールと入れ替わるように兵が入ってきて、黒騎士もまた退出するのであった。
「で、バイゲン王の処遇だが、希望はあるかい?」
キミュケールは階段を降りながら、黒騎士に尋ねるが、黒騎士は思案する。
「正直、あまり興味がないな。ただ、仮にも一国の王。利用価値を最大限に用いないとな。死んでもらうにしても、生かすにしても、だ」
キミュケールもまた同感なのだろう。
個人的な感情、興味の類いは一切ないようだ。
「生かすのであれば、ビーゼスで保護することで温情あるキミュケール王子を世間にアピールできる。あとは、本当に人望があるのであれば、弓矢隊を用いる上での煽動者にはなるかもしれない。殺すとなれば、反感を買う可能性があるのと、いくつかの情報や技術が失われる可能性があるくらいか・・・・・・」
「ま、そんなところだろうねぇ。バイゲン王を担ぎ出して、国家再興を狙う輩はいないと思うから、生かした方が得なんだろうね・・・・・・」
言い方から察すると、キミュケールも死んで欲しい派なんだろう。
「王子に任せますよ」
黒騎士は肩を叩いて、先に階段を降りる。




