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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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バイゲン王との謁見

 王の間に辿り着くと王が玉座に座り、拘束されている。


回りを二重三重に兵が取り囲んでいたのだが、キミュケールの到着とともに、道ができる。


「ご苦労様。今から僕らと王で話をするから、この部屋から出ていてくれ。一時間の休憩だ」


キミュケールがそう言うが、拘束しているとはいえ、本当に二人に任せて警備を解いて良いのか迷っているようで、動きがぎこちない。


「大丈夫。何かあっても、君らの責任じゃないよ。一時間だけど、しっかり休んでくれ。朝まで警護してもらうことになるから、休めるうちに休むのも仕事さ」


そういって、手を振ると、兵はようやく敬礼をして退室する。





 全ての兵が出て行くのを確認して、キミュケールと黒騎士は跪き、頭を垂れる。


「このような形での謁見、失礼いたします」


王は、この半日、色々と考えることがあったのだろう。


いくつも質問をしたいのだろうが、どれからしていいものなのか悩んでいるようだった。


「ご質問などがあれば、答えられる範囲でお答えしたく存じますが?」


キミュケールに促され、バイゲン王は一度目をつぶってから静かに開き、声を発する。


「首謀者は誰で、目的はなんじゃ」


見下すように見るその瞳は冷たく、まだ王としての威厳を感じる。


「首謀者は僕、キミュケールです。父もこのことは知りません。目的はまだ申し上げることはできませんが、とりあえず、ウィッセン国へこの国を明け渡すことです」


キミュケールは淀みなく回答するが、ビーゼス国王エデュケールはすでにこのことを知っており、移民の件も伝えてある。


(確かに、真実のみを答えるとはいってないが、な)


黒騎士は兜の奥で嘲笑する。





「いつからじゃ?」


一言ではあるが、キミュケールは意を汲む。


「この黒騎士が宰相となる前から案はありました。プルミエ国を煽り、カンナグァ連邦へ侵攻させ、敗退を機に、援軍派遣に持って行く。少しでも兵を減らし、警備を手薄にすると同時に、警備を名目に我が軍が入城する。その計画を一年半前から進めてまいりました。途中、プルミエ国王が崩御され、ドルディッヒ王が即位したことを機に始動しました」


再び王は目をつぶり、大きなため息とともに目を開く。


「そんな前からか。今日一日考えておったが、思えば会議でのインゲル王は明らかにおかしく、貴殿らの言動も併せて考えると布石だったのだと納得のいくものじゃった。だが、シーハーフも加担しているのか、内通者がおるのかなど、考えてもわからなんだ」


再度王は深くため息をつく。


「シーハーフ国については敢えて申し上げませんが、内通者はいないということだけは断言しましょう。バイゲン王の治政は素晴らしく、裏切るものはおりませんでした。忠実に業務を執行し、統制が取れ、緊張感を持っており、素晴らしいものと畏敬します」


キミュケールの言葉をイヤミと捉えたのか、フンっと鼻で嗤うと、


「世辞は良いわ。実際にこの有様じゃ。有史以来数百年続いた国もこれで終わりじゃ。元より跡継ぎもおらん。シーハーフ国のように選挙制にするか、養子をとるかを検討していたときじゃったから、併合もやむを得まい。長い歴史にはそういった過去もあり、しばらくして再度独立した例もある。致し方なしじゃ」


「その潔さは尊敬します」


形ばかりの言葉を返す。


しばらく沈黙が流れ、また王からの質問が飛ぶ。


「どうやって黒騎士殿はこの王城、城下町に近づいたのじゃ。我が軍の弓兵は遠距離攻撃を得意とする。遠方からの敵に気付くことを第一とし、索敵には細心の注意を払っておる。王城も然りじゃ。厩舎を併設した失敗から、城門が意味をなさないのは理解するが、それにしても弓兵が近衛兵や重装兵を駆逐して制圧できるほどヤワではないはずじゃ」


キミュケールと黒騎士は顔を見合わせ、クスッと笑ったかと思うと、解説をする。

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