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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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黒騎士の鎧

 キミュケールがアドランデ将軍に向けて伝令を飛ばしてくれたので、明日の朝に向かい入れることになるだろう。


それまでは、ビーゼス国の管理下となる。


武器や防具、書物などの他は回収したいものはなく、後は兵士と技術者、その家族の受け入れを行なうだけである。


移民については刺激となるため、明日以降に発表することになるが、おそらくは何とかなるだろう。


これについては、アドランデ将軍にお願いしてある。


午後八時になり、全指揮官を集めると、今までの経緯と現状の説明、今後のことを伝える。


報告も受けるのだが、思いの外何の問題も起きていないようだった。


一部の武装蜂起なども想定していたのだが、全く起きていないようで、嬉しい誤算と言えた。


ただ、ウィッセン国もヴィータ国も立場の違いこそあれ、征服したものとされたものが徐々に現実を見始めるのもこれからだ。


おそらくはウィッセン国の尊大な態度が、高圧的にヴィータ国を無理矢理押さえつけるような圧政を強いることになるだろう。


そうなってくれると、ビーゼス国としてはありがたい。


特に何の問題も無く、一時間もせずに会議は終わり、皆散り散りに去って行く。


キミュケールと黒騎士だけが残り、会議に移る。





「まずは第一段階成功ですね」


黒騎士は兜の中で微笑み、ひとまずの成功を祝う。


「ふふふ。君の言うとおりにしたら、本当に一兵たりとも失うことなく、国が手に入ってしまったよ。未だに信じられない。見てくれよ。両手の震えが止まらない」


そういって、両手をかざすが、当然震えてなどいない。


キミュケールもまた成功を確信していたはずなのだから。


「さて、バイゲン王の前に行くとしよう。その前に二人だけで話すことはあるかい?」


「いや、特に思い当たらないな。思い出したら王との謁見の後にまた話をさせて欲しい」


「了解! では、敗国の王の元へ行こう」


二人は足取り軽く王の拘束している間へと向かう。


「あ、そうだ。ビーゼスに戻ったら、鎧の新調をお願いしたいんだ。こないだ訓練で戦闘をする羽目になったんだが、コイツは重い上に関節可動域に問題がある」


「なんだ。ワザとかと思ったよ。外見的なこだわりとかで。顔と髪、肌の色が隠れればいいわけだからさ。兜だけ良いんじゃないかと思ってたんだよね、最初から」


キミュケールは何を今更といった感じで答える。


「気付いていたらな言って下さいよ。手袋やブーツがあるから、結局首から上だけで良いんじゃないかって訓練中に気付きましたよ」


黒騎士が言うと、キミュケールは大笑いする。


「なんだ、君も存外抜けているところがあるな。ふふふ。良かったよ、人間らしい一面が見えてさっ。ははははは」


ひとしきり笑った後に、了承する。


「そうだね。国に戻ったら考えよう。兜だけだとかえって怪しいから、削れるところを削ろう。それに、今後の動き次第では、もう隠さなくても良い時期が近づくかも知れないしね」


まだ当分先なのだろうが、いずれ自分の元を去っていくということを考えてくれているというのはありがたい。

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