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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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塔のような王城

「遅くなってすまない。休憩を取っている斑は日没後から明日の朝まで野営しつつ、哨戒業務を頼む。城下町と湿地帯、海岸方面と全方位に注意を怠るな。アドランデ将軍が明日来るだろうが、夜明け前に来た際は、申し訳ないが城下町にはまだ入らないようにお願いし、野営していただくようにしろ。伝令はこちらから改めて出す」


「はっ。承知いたしました!」


「それと、手が空いているものがいたら、解除した武器や防具を王城に運ぶのを手伝ってくれ。日没までに終わらせたい」


黒騎士は一通り指示を出すと、指揮官を集め、改めて今後の動きを確認する。


「今休憩しているものは野営にて夜間警備をしてもらうが、残りの半分は王城にて休んでもらう。午後八時に士官会議をするので、夜間警備のものもその時は抜けてきてくれ。アドランデ将軍が到着してから正式にヴィータ国を明け渡すので、それまでは我々ビーゼスが指示を出す。今しばらくは辛抱して従ってくれ」


一兵も失うことなく、ヴィータ国を落とした手腕を目の前で見ていたため、異を唱えるものはいない。





 ウィッセン国は近年、ヴィータ国との間での王の性格の不一致もあり、王宮内で侵攻計画が何度も仮想されたが、ついぞ攻略方法が提案されなかった経緯がある。


やはり、遮蔽物がなく、索敵が容易であることと、王城については要害と言えよう。


ウィッセン国が重装であり、俊敏性がないこと、活動時間が少ないことの弱点が、どうしても索敵に引っかかってしまう原因となっており、単発での矢は重装で防げるものの、多量ともなると受傷は避けられない。


何よりも、王城では投石、落石があり、重装であっても厳しいものであって、籠城された際は攻めあぐねる。


最も大きな課題は、ヴィータ国の国王もまたウィッセン国の国王を嫌っているため、警戒心を緩めないことであろう。


お互いに仮想的としているだけあって、対策は練られている。


いとも簡単にやってのけたビーゼス国にウィッセン国の兵が従わないわけはなかった。





 無事に武器や防具が王城の一角に集められると、黒騎士は礼を言い、ウィッセン国兵士は野営地へと戻っていく。


キミュケールの計らいで、兵舎にあった武器や防具もヴィータ国兵士を動員し、王城に集められる。


こうやって、国中の武器と防具、書籍などが集められることになった。


自宅など、一部隠し持つ兵もいただろうが、黒騎士もそこまでは気にしていなかった。


ただ、キミュケールが脅してくれたようで、隠し持つものは少なかったのではないかと思われる。


「あとで、発見されたときに、どうなるかは補償しないよ。特に僕らがやってるうちはともかく、ウィッセン国のアドランデ将軍は家捜しまでするかも知れないし。その時に発覚したリスクは自己責任でね!」


そう言われるとさすがに隠し持つ強者は少ない。


結果、国中から集まり、王城へと運び込まれた。


ほどよくキミュケールがウィッセン国の名前を出すと、やはり敵意があるのか従ってくれる。


「ウィッセン国に弓矢の秘密などを渡したくないから、今のうちに回収したい。悪いようにはしないから、書籍など含め、あらゆるものを国に残さずに明け渡したい」


そう言うと、武器制作のための道具などや具材すら集まり、瞬く間に王城の一階を埋め尽くす。





 日没が訪れるころに、一通りの回収がすんだため、ウィッセン国の野営部隊を半分残し、残りを王城に招き入れる。


一階はすでに物置と化しており、二階、三階、四階をウィッセン国の兵に開放した。


最上階である五階が元々王の間と居室になっていたため、そのままそこに王を拘束する。


どんな隠し通路があるかも知れないので、金属製の手錠と縄での拘束はさせてもらい、兵も十名以上で四方を囲う。


バイゲン国王に妻子はなく、王族は少ないため、拘束するものは少数ですんだ。


あくまでも王位継承権があるものだけで良い。


黒騎士が思ったのが正解だったらしく、灯台に着想を得て建築されたもののようで、円柱状の建物になっている。


内層と外層にわけられ、外層には兵が配置できるようになっているため、外からの侵入に対してめっぽう強かった。


今回、キミュケール達が自由に王城に出入りできるようになった理由でもあるのだが、別途作られた厩舎が円柱状の王城に増築されたことがある。


ゆえに、東側の出入り口が厩舎と繋がっており、そこだけ円柱ではなくなっている。

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