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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
173/205

アドランデ将軍が来る前に

 ウィッセン国の兵に城下町での待機を命じ、兵及び住民に対し、一切の武力の禁止を伝え、野営準備をするように伝える。


「野営準備が整ったら、半分は休息に入れ。残り半分は待機だ。万が一城下町からの武装蜂起などがあったら、鎮圧して構わないが、不要な衝突は絶対に避けよ」


黒騎士はキミュケールとともに王城に戻ると、城内の兵で王の拘束に関する兵以外を総動員し、城内の書籍、書類など、あらゆるものを城外に運び出していく。


芸術品や宝石など、金銭的な価値ではなく、欲しているのはあくまでも情報である。


ウィッセン国に渡すと、後の武力、内政に影響を与えると思われる全てを徴収していく。


これは黒騎士の希望でもあり、条件でもあったため、全て黒騎士の元に集約されていく。


ビーゼス国の中で、黒騎士が独自に編制した部隊がおり、直属の部下となっているのだが、通称「黒騎士隊」が到着するまでは、荷台に載せて管理することとした。


城内にある武器も一通り見たのだが、やはり弓矢だけは明らかに他国と異なる。


槍や剣などはたいして変わらない。


鎧や盾は多少の工夫が凝らされていたのは気になったが、そもそもの質が良質とは言えない。


おそらくは、自国の弓矢に耐えられるように改良を重ねたつもりなのだろうが、既存のものをちょっといじっただけであり、さほど向上は認められない。


しかし、ウィッセン国の技術と組み合わさると厄介な可能性を感じたため、鎧や盾も回収対象とした。





「黒騎士宰相、回収した武器や防具、書物なんかはどうするんだい? ビーゼス国に倉庫を用意しようか?」


キミュケールがあまりにも膨大な量となったものを見上げて、提案する。


「いや、最初はそう考えていたんだが、プルミエ国に場所を用意してもらおうかと考えている。まだ何の了解も得ていないが」


「手伝ってもらう見返りに約束したものだ。自由にしてもらって構わないし、運搬や保管なんか、手伝うことがあったら言ってくれ。手配するよ」


キミュケールは裏の意図など無く提案を申し出てくれる。


「運搬は実はプルミエ国にすでにお願いしてあるんだ。手紙で一方的にだけど。荷台だけで数十台になりそうなんでね」


エルドス近衛兵長に宛てた書簡には、運搬用に輜重隊を編成し、こちらに寄こすように手配していたのと、保管場所の確保もお願いしていたのである。


全てのものを1階の一角に集めきると、午後三時くらいとなっており、王城内の仕事は一段落したことになる。


「王との面談、ウィッセン国指揮官との会議は夕方以降で良いだろう。一度、武装解除した武器、防具の回収を行ないたいので、野営地に戻る」


黒騎士はそう言うと、キミュケールも


「じゃあ、僕は兵舎に行って夕方王城に来るように伝えるのと、町長、有力者などにも同じように伝えに行くよ。ついでに軽く街の様子を見てくる」


と言ってともに王城を出る。

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