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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第一部 第一次プルミエ侵攻
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族長への報告と防衛戦の指揮

 登り切ると、結構立派な小屋が眼前に現れる。


族長と呼ばれる集落の長が住むには広いが、会議やら何やらをするために少し広めにしてあるだけとのことだ。


先の戦士の他にもう一人、戦士がおり、村民A、Bと言った具合に、族長含め、五人が揃う。


こちらの五人にあわせたのかどうかは不明だが、毎回このメンバーで話し合いを行なってきた。


ホルツホックにも国王というのがいるらしいが、数年に一度、族長が順繰りになるようで、当番みたいなものだとのことだ。


族長同士、何らかの手段で連絡を取り合っており、どの族長と連絡をしても、共有できているから安心してくれといわれているので、ホルツホック国王と対談するのと同義として接してきた。





「さっそくですが、五回目の哨戒業務で、ようやく情報を持っている者が釣れました。偽の情報の可能性は低いと思われるので、信憑性は問題ありません。」


のぞみが族長へと報告する。


「兵士を尋問したところ、侵略戦争を開始することは事実のようです。ただし、戦力はオージュス連合国のうち、プルミエ国のみ。小規模に侵攻し、情報を得ながら侵略する方針のようです。一度侵攻することで得られた情報を次に活かし、少しずつ確実に進めるつもりみたいです」


そこまで言うと、のぞみ含め、琴葉一行は族長の反応を窺う。


「やはりそうか。こちらが独自で手に入れた情報と合致するな。間違いないだろう」


そう返答すると、琴葉のみが驚いた様子で、


「えぇ~。ひっどーい。わたしたちのこと信用しないで、自分たちも調べてたの? 性格悪るぅ~」


と族長に指さしをする。


何が気に入ったのか、どう考えても失礼な琴葉に対し、満面の笑みを浮かべ、


「はっはっはっは。すまんなぁ。腕試しや信用調査と思って勘弁してくれ。国境付近のこのあたりじゃ、間者と呼ばれるものや諜報部員、調略といったものも日常茶飯事でな。一応、エムエールから連絡はあったのだが、その者達がいつの間にか入れ替わってる可能性もあったしな。いや、すまん」


そういうと、また豪快に笑った。


族長と言っても、まだ四十過ぎの男性であり、元戦士というだけあって、荒々しさが残っていた。


実は、エムエールからの連絡の中に書いてあった隊員の特徴として「空気の読めない天然サイコパスな小さい女の子がいるので、絶対に間違えることはない」と記載があったのだが、それを思い出したがゆえのことだった。


集落側はちょっとした臨戦態勢の緊迫感、琴葉一行側はあきらめの嘆息と焦燥感が一瞬場を形成したのだが、族長の言葉で、和やかな雰囲気を取り戻す。


「で、琴葉殿らはこれからいかがなさるおつもりで?」


傍らにいた戦士が問いかける。





「ボクたちは貴国の判断に従います。よほど悪手でない限りは防衛を手伝うように言付かってますので。ただ、ボクたちは原則として五人で一隊として遊撃的に動かせていただけると助かります」


のぞみがまだ先ほどのドキドキとする心臓を落ち着かせながら返答する。


「まぁ、なんていうか、集団行動とか、指揮系統に入るっていうのが苦手なんでね」


朝美も琴葉とは違う意味で物怖じすることなく、言葉を付け加えるが、良識のあるのぞみは冷や汗が止まらない。


またも族長は豪快に笑って頷く。


「よし。では、提案だが、敵の進軍ルートを予測した上で、我々に迎撃の指示を出してくれ。我々はその通りに動くとする。ただし、二度目の侵攻がある前提で、一度目の侵攻後に各集落はほぼ全て移動させる。さすがにこちらの国の細かい情報は全て教えることはできないが、初回侵攻に対しては琴葉殿らが指示を下され」


一同が目を丸くする中、


「おっけー。わたしたちに任せて~。大船に乗ったつもりでちょうだい!」


と大言壮語する少女がいるのであった。

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