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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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両者、目的達成

 三十分の休憩、待機を命じ、狼煙を上げるべきか黒騎士は思案する。


先に黒騎士が狼煙を上げた場合は、それに合わせてキミュケールが王城制圧に向けて動き出す。


しかし、狼煙に気付いた兵が警戒するため、やや黒騎士達の目的地点達成が困難になる可能性もある。


メリットは、外の黒騎士達に目を向けることができることと、黒騎士達の位置を知らせることができる点である。


対してキミュケールが先に狼煙を上げた場合は、確実に王城制圧が可能だ。


しかし、異変に気付かれた場合、王城に兵が殺到し、キミュケールが窮地に陥る可能性がある。


今回は黒騎士が達成可能な位置にいるため問題ないが、場合によっては黒騎士達が目的達成不能な位置にいた場合は完全に失敗する可能性がある。


基本的には夜明け直前に王城を制圧し、国王を確保する手筈となっているため、およそ一時間。


黒騎士は思案し、決断する。


(年寄りの朝は早いというしな。夜明けよりも一時間早いが、動くか。多少陽動になると良いのだが)


三十分の休憩の後に、作戦を決行する旨を伝える。





 合図の狼煙を上げる。


白い煙が上空に一本の筋を描き、夜明け前にもかかわらず、しっかりと視認できるのが見ていてわかる。


「よし、これから徒歩でゆっくりと城下町付近に向かう。一定距離近づいたら馬上し、速歩か駆け足で目的地まで進む。指示を聞き漏らすな。敵とは交戦する必要は無い。全てやり過ごし、目的地に到着することだけを最優先にせよ」


黒騎士は先導をとりながら、馬を引いて城下町に向けて歩き出す。


まだ完全に闇夜であるが、さすがに接敵してもおかしくないし、ここまで接近を許すのかと疑問に思い始める頃。


およそ二十分くらいした時であろうか、城下町の方からも白い狼煙があがる。


作戦行動開始の狼煙だ。


こちらがあげてからやや時間が経っての狼煙ゆえ、少し心配になったが、黒騎士は速歩を指示する。


「皆、馬に乗れ。槍と盾を装備して速歩だ。途中で駆け足になる。隊列を乱さずに着いてこい」


黒騎士も乗馬し、先頭に立つ。


(正面付近ではなく、完全に側面からの接近だからか? あまりにも接近を許しすぎる。罠か? まだ気付いていないわけが無いと思うのだが)


疑念を抱きつつ、かがり火と、松明の動きを見るが、特に慌ただしい様子もない。


騎馬で三十分の位置に来て気付かないのは哨戒、立哨の意味が無い。


ここに来て罠の可能性を強く疑わなければいけないと判断を迫られていた頃、ようやく慌ただしく松明が動き出す。


疑念は払拭されたわけではないが、進む決断をし、黒騎士は駆け足の指示を出す。


「もはや襲撃を隠す必要は無い! 声をあげろ。城下町と入り口を目指す」





 南東を見ると、まだ空は明るくない。


予定よりも三十分は早いが、妥協範囲の誤差だ。


ようやく事態を察知したヴィータ国の兵は動き出す。


松明が城下町より多数出て、平野へと展開されていく。


(これが罠でなければ、あまりにも滑稽だな。気付くのが遅い上に、こちらではなく、湿地に向けて兵を展開し始めた。あまりにもお粗末だ)


黒騎士はあまりにも上手くいきすぎていることに疑念を抱きつつ、現状を嘲笑する。


(まともに考えればこんな間抜けな軍はいない。慎重で臆病なバイゼル王の軍だ。あり得ん。普通は罠だろうが、ここまで来ると、キミュケールが何か下準備をした可能性の方が高いな)


「いくぞ、あの松明と城下町の間に割って入る。達成できれば我らの勝ちだ」


あと十分ほどで目的地に達成するというところで、王城より狼煙が上がる。


白い煙が二筋。


制圧完了と王の確保を知らせる狼煙である。


黒騎士はキミュケールの成功を確認すると、指揮官に大声で伝える。


「キミュケール王子が王城を制圧、王の確保に成功した。ここからは陽動もかねて行動を起こす。声を上げ、できるだけ兵の注目を集めろ。城下町に控える全ての兵をこちらに向けろ」


そういって歓声を上げさせ、十分後には城下町入り口に隊列を組んで整列させることに成功したのだった。

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