キミュケールとの出会い
「もう起きても大丈夫ですよ」
タクソケールとは似ているが、違う口調の声に反応し起き上がる。
起き上がり、首を左右にコキコキとならすと、改めて声がした方を見る。
「改めまして、タクソケールがお世話になっております。兄のキミュケールと申します」
タクソケールの兄と名乗った男は、弟とは異なる細身の身体に柔らかな笑みを浮かべて、握手を求めてくる。
「初対面で、血糊を付けて挨拶するのは初めてだが、無礼をお許しください。初めまして。クロノと申します」
よくはわからないまま握手をする。
(たぶん、この人物こそが台本を書いた人なのだろう)
側近や部下が書いた可能性も十分にあるのだが、クロノの直感が告げていた。
第一王子でありながら、この人は礼儀正しく、ユモーアに富み、知識、経験なども兼ね備える。
コキュニケーション能力も高く、策謀など、頭も冴える人物である。
おそらく、戦闘能力も決して低くはないだろう。
隙のなさを感じさせる。
「とりあえず、命の恩人ということで良いでしょうか?」
クロノは台本の作者であるかどうかの確認をする。
「はは。確かに色々と策謀を練ったのは私だけど、助けてやって欲しいと懇願してきたのはタクソケールだよ」
キミュケールはタクソケールを指さすが、
「いや、でも多分、俺が言わなくても兄さんは助けたよね?」
と血糊を拭きながら喋るのだが、拭いているようでただ広がっているのが彼らしい。
「そうだね。わざわざ殺そうとするところを見るに、それだけの価値があるということだからね。興味は湧くよ」
正直に言うところにクロノは魅力を感じる。
初対面なのだが、なんとなくこの兄弟とは仲良くやっていけそうな気がして笑みがこぼれた。




