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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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マータ対策

「あら~。おひさしぶりですぅ、アス先生!」


そういって、にこやかに手を振るマータを見て、アス老人はにこやかに対応する。


(こ、こりゃあ、マズイのがきおったぞ。チビの嬢ちゃんの姿を見せるわけにはいかんぞい)


内心で、最大の危機を感じ取るも、今は訓練に向けて荷物整理などをしており、鉢合わせは避けられるだろう。


「おぅ。久しぶりじゃのぅ。使者というのはお前さんじゃったか」


握手を交わすと、マータは抱きついてくる。


「ほっほっほ。これこれ。で、後ろの若いのは?」


アス老人は、実は覚えていたのだが、あえて惚けて聞いてみる。


「一応、隊長のアッサーラくんと、テイザンくんです。二人とも一年生の時に先生の授業受けたらしいですわよ」


そういって、距離をとって、二人を紹介する。


「おお、すまんな。もう年じゃて、忘れっぽくてなぁ。いや、何か見覚えがあるぞぃ。確かアッサーラくんは士官科におった子じゃな。そちらでも教えた記憶があるわぃ」


「アス先生、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」


にこやかに挨拶する愛想の良さに腹黒いものが見え隠れするアッサーラをにこやかに対応する。


(小狡いタイプじゃのう。だが、そういった打算も生き抜くためには必要じゃ)


「うぃす。お久しぶりです、センセー。テイザンっす」


ぶっきらぼうだが、礼儀は持ち合わせているらしい、眼光鋭い男は粗野だがどことなく誠実さを感じさせる。


アッサーラとはそういった点で違いそうだ。


順に挨拶を交わすと、本題に入る。


「おわかりかと思いますが、本国からの使者としてマータ先生が来ました。自分とテイザンが護衛、あの二名は非戦闘員です。一週間ほどの滞在を予定してますが、状況を検分しつつ、帰りにはその場で判断したいと思います」


アッサーラが隊長としてマータの代わりに主旨を述べる。


「基本的には、琴葉隊には解散してもらおうと思ってるけど、三回目の侵攻がありそうなら継続してもらうこともあるかもしれない。その判断を私が一任されてるの。だから、そのために一週間滞在するわ」


「うむ。承知した。フラハー王に取り次ぐので、今しばらく待っておれ。わしの一存では対応しきれんでの」


笑って退席するが、フラハー王の前に、のぞみとテラガルドを呼び、フラハー王の元に行くまでに、用件と琴葉のことを説明する。


「一週間もある。しかも、チビの嬢ちゃんがおることもわかっておる。じゃから、一度も顔を合わさないことは無理じゃ。なるべく二人きりにさせないことと、周囲が気をつかって立ち回るしかない。これは今から王にも伝える。良いな!」


アス老人が足早に歩きながら、伝える。


「あと、マータ先生は魔法にコンプレックスを持っておる。魔法が使えないことを恥じているようじゃから、そこもNGワードとして覚えておくのじゃ」


いつになく真剣に言うと、フラハー王に用件を伝える。


どっちが本当の用件だかわからないくらい、琴葉とマータの話をし、対応をお願いする。


「承知しました。しかし、運良く琴葉隊の皆様は明日から再び平野で野営です。アッサーラ隊の皆様には砦を使っていただきましょう。視察等で訪れることがあっても、接触は最小限になるでしょうし、会議や聞き取り調査は元から参加を拒否するわけにはまいりません。回りで何とかしましょう」


フラハー王はいつも通りさわやかに笑顔を見せると、あまり待たせるのは失礼とばかりに入り口に向かう。

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