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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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慰霊祭

「魂は天に、肉体は地に還らんことを・・・・・・」


「黙想!」


フラハー王の言葉で始まった慰霊祭は遺体を燃やすところから始まる。


すでに落とし穴のあった場所に遺体は集められている。


キチンと並べられたものではなく、適当に放り投げられたものだが、これはそもそもの信仰上の考え方であって、決して適当に行なっているわけではない。


琴葉自らの申し出で、遺体に火を放つ。


少し髪が伸びたのか、後ろで一つに結んでいる。


いつもの明るい表情はなく、どこか遠くを見つめるような悲しい目だ。


自分たちが殺した幕引きとして最後を締めたいという思いがあったようだ。


火が付いた松明を穴に投げ込む。


続いて、数人が同様に松明を投げる。


不要な木材なども入っているため、瞬く間に火は燃え上がる。


再度、皆で黙想した後に、他の作業へと移っていく。


火が燃え尽きる頃を見て、土をかけることになるのだが、火の勢いからして夕方になるだろう。





 朝美は火の光で、いつもよりも一層、髪が赤みを増して見える。


赤髪ではあるが、真っ赤ということではなく、基本的には黒髪だ。


ただ、日の光など、透けてみると、明らかに赤みがかかっているという特殊な色なのだが、カンナグァでは稀少である。


オージュス連合ではストロベリーブロンドと言われる本当に赤い髪も稀にいるらしいが、血統的に似ているのかも知れない。


しばらく火を見つめるが、急に振り返り、いつもの笑みを浮かべる。


「さ、残されたあたしたちは、やれることをやろうかね・・・・・・」


まだ火を見つめるのぞみの肩を抱き、無理矢理引きずっていく。


のぞみの策で多くの兵を葬っているのだ。


後になって、色々と去来する想いを一番感じているのは彼女なのだから・・・・・・





 アス老人とテラガルドは並んで少女達を見守る。


「躊躇することなく相手を殺すことができる。反面、死者に対する思いも忘れない。なかなか両立できるものではありません。あの年頃であれば色々と多感でしょうから、心配ですね」


火から目を反らすことなくテラガルドは呟く。


「そうじゃの。いうても二十歳そこそこの生娘たちじゃ。なんだかんだ言ってまだ子供じゃからなぁ」


アス老人もまた火から目を反らさずに答える。


「本国の判断次第ですが、場合によってはこれで任務終了ですね」


「そうじゃな。寂しくなるのぅ。また隠居生活に戻れる嬉しさよりは、寂しさが勝るなんて、わしも歳食ったわ・・・・・・」


自嘲気味に笑うアス老人につられ、テラガルドも笑う。


「でも、そう思わせるほどに良い子達ですよ」


「そうじゃな」


二人に長い沈黙が流れる。


「お主、独り身じゃったよな?」


「ええ・・・・・・失うものはありませんよ」


アス老人は微笑む。


「わしもじゃ。ばあさんなくしてヒマしとったで、今回の件を受けたんじゃ」


再び沈黙が流れる。


「不謹慎ですが、もう少しだけ琴葉隊で戦いたいですね」


「そうじゃな・・・・・・ ちょっと、がんばってみようかの」


そういって、アス老人は天幕に戻る。


思うところがあるのか、しばらく火を見つめるテラガルドであった。

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