プルミエの被害状況
一方、ホルツホック国の判断で、わざと生還させたものも多くおり、夕方に行なわれたドルディッヒ王による本陣強襲突撃よりも前に逃亡したものについては、あえて迎撃しなかったようだ。
これは、ホルツホック国の独断であるが、素晴らしい判断だったと思われる。
伏兵が出る前のことであるため、カンナグァ連邦の兵数が千五百だという情報を与えることに成功したということでもある。
一番最後、夕方の攻撃の直前に逃亡した近衛兵団の兵士と思われる者を最後に、その後は一兵たりとも逃すことなく始末したとのことだったので、行きよりも帰りが怖いホルツホックの森である。
近衛兵団については、毎日数名の逃亡者がおり、あまりにも多く、定期的なので、途中の経過報告のために派遣されたものではないかと予測された。
どこまでわざと生還させるか悩んだ末に、手を出さないことにしたとのことだった。
そして、この侵攻における最大の謎は、プルミエ国アインハイツ将軍率いる軽装歩兵千とウィッセン国アドランデ将軍率いる重装歩兵千が森の半ばまで侵攻したかと思ったら、途中で引き返したとのことである。
元より、前の部隊から大幅に行軍が遅れていたのだが、先頭部隊の夜襲後に、一度行軍停止し、そこから動くことなく引き返したとのことだった。
何やら近衛兵団の兵士と思われる伝令が接触したのちに慌てて引き返したとのことなので、ドルディッヒ王が何かしらの命令を下したものと思われたとのことである。
別動部隊として、何かしら作戦を強く疑い、慎重な追跡を行なったが、そのまま森を抜け、二度と森に入ることはなかったようだ。
さらに、侵攻と直接関係があるかどうかは不明だが、二度にわたってプルミエ国の国境付近の森で訓練が実施されたとのことであった。
ウィッセン国の鎧兜の紋章をした重装騎兵が、一回目は森の入り口付近の出入り、二度目は森の中で一泊野営しての訓練だったようで、何やら全身を黒い甲冑で身を包んだ指揮官らしき者が率いていたとのことである。
非常に礼儀正しく、争いごとを避けるようなふるまいで、訓練後にはキチンと清掃し、森を侵したお詫びとして宝石まで投げ込む人物だったとのことであった。




