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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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リアとの協約

「失礼ですね。れっきとした女性ですよ」


そういって、兜をとり、後ろでまとめて服に入れていた長く美しいブロンドの髪をほどく。


髪をなびかせ、夕陽とひまわりをバックにした彼女はとても綺麗で、透き通るような青い瞳をしばし見取れて時間を忘れるほどだった。


我に返って、その女性が知り合いだと気付く。


「き、君は「リア」。リアじゃないか。なぜこんなところに! いや、そうか、確か君は元オージュス連合国の人間だと以前言っていたような・・・・・・」


黒騎士は完全に思い出し、過去の記憶を掘り返す。


「ようやく、思い出してくれたようね」


リアと呼ばれた女性は少女のような屈託ない笑顔を見せる。


が、黒騎士はここで重大な決断を迫られる。


(リアは私が誰かを知っている。ここで、口を封じる必要があるか? どうする?)


そんな黒騎士の思考を知ってか知らずか、リアは饒舌に喋る。


先ほどひまわり鑑賞をしていたときの無表情で寡黙な人物とは別人のようだ。


「まさか、オージュス連合国を騒がすビーゼス国の黒騎士宰相が君だったとは、ね。でも、正体が分かったら、全て納得よ。今までに聞いた数々の功績はむしろ当然だわ。いえ、逆に少ないくらいよ」


悪戯を発見したお姉さんのような表情と言い方だ。


「さて。で、どうするの? 私を殺す? 正体を知ってしまったから」


決断を迫るリアは楽しそうに黒騎士に歩み寄る。


黒騎士はまだ決断が出せない。


思いの外、情が決断を邪魔をする。


「もし、私が以前貴方に語ったことを覚えているのであれば、実現のために手を貸して欲しいの。貴方の目的が何かはわからないけど、協力の見返りにできることはするわ」


(以前語ったこと・・・・・・なるほど)


黒騎士は以前リアが夢として語っていたことを思い出し、決断する。


兜を脱ぎ、腰までかかるストレートの銀髪を風になびかせる。


「私の考えの全てを話そう。その上でできることだけ協力してくれれば良い。友人として強制はしない。私も友人としてできることをすると誓う」


お互いに素顔を晒し、微笑む。


固く手を握り、友人としての協力を約束するのだった。


二人ともに髪を鎧にしまい、黒騎士は再び兜をかぶる。


以後、アインハイツ将軍の目を盗み、お互いの利害を一致させていくことになる。

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