表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
126/205

訓練の申し出

 翌日、いつものように重装騎兵の報告を聞き、訓練に顔を出す。


「黒騎士宰相、大変失礼ですが、お願いがございます」


そういって指揮官はこちらの表情を伺う。


兜をかぶっているため、表情が見えないのが不安だったのだろう。


どんな返答をされるか予想が付かず、萎縮している。


「聞けるかどうかはわかりませんが、できるだけ応じましょう」


黒騎士はこの段階で、指揮官自体の意思ではなく、もっと上、おそらくはウィッセン国王インゲルに予め言われていた何かではないかと予想していた。


「では。黒騎士宰相は武芸にも秀でていると伺いました。是非、稽古を付けていただくことはできますでしょうか?」


しばしの間、黒騎士は悩む。


黒騎士も武芸は嗜み、一般兵以上の戦闘力を誇るのではあるが、少々特殊である。


腰に差した独特な形状の剣による剣術、体術、杖術が戦闘スタイルであるが、あまりにもマイナーな流派ゆえ、素性の特定を恐れ、人前では披露していない。


通常のロングソードですら、一振りすれば、「ああ、あの流派か。で、あの国出身だから、あの剣術道場だな」といった具合でおおよそバレてしまう可能性は高い。


それに、戦闘スタイルを知られるというのは、弱点を晒すのも同義であるため、普通はしないものだ。


ウィッセン国王インゲルは、単純に黒騎士宰相の正体を知りたがっているのと、少しでも弱点を見つけようという魂胆であるとということが分かる。


が、ここで断るのも癪に障る。


それに、これから後は戦闘するシチュエーションも出てくるであろう。


いつまでも隠して出し惜しみしても仕方がない。


考えた末、杖術で対応することとした。


相手は重装騎兵だ。


さすがに馬上からは降りてもらい、地上で戦うにしても、武器は長物の方が得意だろう。


相手の得意なものを叩き潰さないと、納得はしないだろう。


そう考え、杖を選ぶ。


黒檀という木でできた、百二十八センチ、直径二十四ミリメートルの円柱状の棒である。


長い沈黙で、指揮官が恐怖に駆られている様子を見て、黒騎士は口を開く。


「ああ、すまない。何を披露するのが良いか考えていたのだ。もちろん構わないが、ご存じの通り、あまり個人戦闘を披露すると、色々と不都合もあるのでな。そこら辺はおわかりいただけているだろうが」


正直に答えると、指揮官も怒っているのではないと安心したようで、


「もちろん承知しております。ご無理を承知でのお願いです。できる範囲で構いませんので」


黒騎士は立ち上がり、


「では、馬上ではなく、地上でよろしければお相手いたそう。好きな獲物を持って、三十分後に野営地前にて行なうとしよう」


と指揮官にいうと、王宮に愛用の杖を取りに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ