王女との入れ違い
黒騎士は頷いて同意の意を示す。
「その妹君、王女様でよろしいのでしょうか? お見かけしたことはありませんな」
特に気にしたことも無かったのだが、ふと思って口に出す。
女性の王族は別の宮殿に住んでいることもあり、隔離されていることは不思議で無いため、気にしたこともなかった。
存在することだけは知っていたのだが。
「そうでしたっけか? よくこちらの庭園にもおいでになりますよ。 二日に一度は顔を見せて、私なんかにも話しかけてくれるんですがねぇ。 本当に良い娘さんでねぇ」
そう言って、遠い目をしている。
(そんな頻度で来ているのであれば会っていてもおかしくないが、この格好だ。避けられているのかもしれんな。それにしても、庭師に話しかけるとなると、それなりに気さくで分け隔てない人物なのだろうか? その割にアールッシュを嫌がったというのもわからんが)
黒騎士は少し考え、今日のところは自室に戻ることとした。
庭園を後にし、何となく振り返ると、入れ違いのようにまだあどけなさの残る少女が侍女を引き連れて庭園に降りるのを見て、少女がさきほどの話題に上った王女なのだと推察したのだった。




