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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
123/205

王の御前での騎射演武

 キミュケールは翌日より行動を開始する。


半数の部下の弓騎兵には弓矢を装備させた上で、ヴィータ国周辺を分散して哨戒させる。


残りの半数は休憩としたのだが、多くは城下町を散策するものが多かったようだ。


本来ならば、夜間も哨戒を行なうべきなのだろうが、見知らぬ土地ということもあり、馬も馴れるまでは控えたいと申し出てヴィータ国の兵にお願いしたのだった。


それから数日は交流もかねてヴィータ国の弓兵達と合同で訓練をする。


といっても、馬に乗るのを体験させたりする程度であるが、当人達は大喜びである。


中にはセンスの良いものもおり、数時間で走らせることができるものもいた。


騎射が見たいという要望も強く出たのだが、バイゲン王との話し合いでなるべく刺激しないよう、騎射は行なわないということを説明し、納得してもらう。


それでも、見たいというものが多くいたため、キミュケールが代表して騎射を見せることにしたのだ。


ウワサを聞きつけたバイゲン王まで観覧する大きなイベントとなってしまったが、城下町外れで行なわれたそれは大盛況であった。


弓矢隊との大きな違いは、機動力である。


射っては離れ、近づいては射る。


これを繰り返すことで、遠距離からのヒットアンドアウェイを繰り返す。


集団での斉射は基本行なわないが、多数集まればできなくもない。


そのことを十分に演説した後に、馬を疾走させ、的を射貫いた後に、再び疾走して距離を取る。


相手が弓兵であっても、すぐに射程外に逃げられることを示すためにも、射程圏を示すところに赤い線をはって示す。


見せ方、演出が非常に優れており、歓声が沸き返り、老齢のバイゲン王も立ち上がって手を上げることになる。


「ふぅ。運良く的に当ってくれて良かったですよ。一応これでも王子ですからね。恥をかくわけにもいかないし」


そういって、笑顔でバイゲン王に近づく。


「いやはや、ご謙遜を。素晴らしいものを拝見しましたぞ」


そういって、両者ともに固く手を取る。


「いえいえ。本来弓矢は狙撃でない限り的に当てようとするものでもないですから、本当に偶然ですよ。弓矢が本職のヴィータ兵の前で、お恥ずかしい限りです」


「何を仰るか! これほどの技量をお持ちとは感服致しました。他の騎兵の方もさぞや素晴らしい腕前なのでしょう」


そういって、居並ぶ弓騎兵を見る。


バイゲン王はその弓騎兵と同等のものが数年後には自国にも誕生しているだろうことを夢想しているのだろう。


ひとしきり褒めちぎると、王城へと戻っていくのだった。

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