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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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バイゲン王との謁見

「一応、規則になっておりますので、どうぞご理解をお願いします」


そういって、一通りのチェックを受ける。


「キミュケール王子、あの輜重隊の荷物をチェックしても良いでしょうか?」


別のものがキミュケールの元に来て、許可を求めると、


「ああ、アレか。構わないが、飼料担当を呼んで立ち会わせるから、それまで絶対に触らないでくれ」


そういって、馬から下り、担当者を引き連れて、数台の荷台へと移動する。


目的の荷台の覆いを外すと、大量の干し草らしきものが満載されており、穀物のような飼料が入った桶も見られる。


「これは?」


チェックを担当するものが、首をかしげ、キミュケールに尋ねる。


「ああ、聞いていないのかい? 我々の馬のエサだよ。事前に許可は取ってある。自分たちで用意させてもらったんだ。確認取ってもらえばわかるよ」


キミュケールは笑顔で対応する。


「はあ。念のため確認は取らせて頂きますが、草くらいこちらでご用意できなかったんですかねぇ。うちの国もケチ臭いことを。わざわざ輜重隊で何台も草と穀物を運ばせるなんて」


担当官は側にいたものに確認に走らせると、不満顔をする。


「そちらが用意すると申し出があったんだが、丁重にお断りしたんですよ。自分たちの馬は、兵が自分らで世話をするのが我が国のやり方でね。そうでないと、馬との信頼関係は構築できません。それに、飼料がほんの少しでも変わると馬は体調不良になるんです。まぁ、簡単に飼育できるようなら、ヴィータ国もすでに自国で生産できてますよ」


そう言って説明すると、納得して感心しきりであった。


「だから、この干し草も我々にとって宝石のようなものなんです。私がこうして貴方と話し、わざわざ担当官も立ち会わせたことからもおわかりいただけたかと」


そういって、くれぐれも安易に触らないように伝えると、厩舎へと運んでいく。


事前に城下町の外れに厩舎を建てておいてもらったので、そこに稽留することになっていた。


一通り、片付けが済むと、キミュケールは数人の供を連れて王城へと向かう。


ヴィータ国王バイゲンに謁見するためだ。





「道中、ご苦労であった。途中大きな村もなく、野営続きでお疲れだろう。挨拶はほどほどに今日は休まれると良い」


そう言って、バイゲン王は早々に打ち切ろうとしたが、


「では、お言葉に甘えさせて頂きます。が、今後のことだけしばしよろしいでしょうか?」


そういって、キミュケールは話を継続する。


「一応警備ということでこちらに派兵されております。立派に務めたいと思うのですが、あまり貴国の兵を刺激したくもありません。訓練等は軽めに行ない、射撃などは事故防止もかねて控えさせて頂きたく思います」


バイゲンは大きく頷き、笑みを浮かべる。


本音を言うと、訓練や警備などどうでも良い。


この二週間の間で大規模な魔族や魔獣の襲来、異民族の侵攻があるとも思えない。


警備などは形だけなのだから、問題が起きる方がよっぽど面倒なのだ。


「いや、ご配慮感謝する。さすがはキミュケール王子。軍の訓練を見せつけ、威光を示さんとするどこかの王とは見識がちがうのぅ。軽くあたりを哨戒してくれればそれで良い。あるいは休暇だと思って、城下町で食事をしてくだされ。我が国の食は誇りですのでな」


そういって、顎髭を上から下になぞる。


「こちらこそ、感謝致します。せっかくなので、貴国の弓兵に乗馬の技術や馬との接し方などをお伝えできればと思っております。一ヶ月後には五百の騎馬がくることですし」


キミュケールはあえて騎馬の進呈を持ち出し、バイゲン王のご機嫌を得ることを忘れない。


文武両道を絵に描いたような人物であり、コミュニケーション能力も高く、深謀遠慮である。


機微を察知する能力も高く、外交において高い能力を発揮する。


バイゲン王は満面の笑みで手を広げ、歓迎の意を示す。


「おお、ちょっと気が早いが、いずれ馬の取り扱いもご教授頂きたいと思っておったのじゃ。城下町だけでなく、王城にも厩舎を作らせたので、そちらも利用しつつ、色々と始動してやって下され」


「ありがとうございます。そちらは是非拝見させて頂きます。馬屋は飼育する上で重要ですからね」


そう微笑むと、一礼して兵舎へと案内されていく。


(さてと。これで私の仕事は半分達成したも同然だ。あとは当日に二つのミッションをこなすだけだ)

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