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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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弓兵の天敵

 キミュケール一行は、途中での村もないため、数日の間、野営をしながらヴィータ国を目指す。


ヴィータ国は第二次プルミエ侵攻と呼ばれるカンナグァ連邦への侵攻が現在進行中だが、それに弓兵を二千も派兵しているのだ。


国内にまだ数千の兵がいると思われるが、北方異民族や魔獣、魔族の警戒もある。


半分は形式上だが、ビーゼス国が警備として派兵されているのだ。


加えて、無事に侵攻が終わった暁には、ビーゼス国が騎馬を五百提供することとなっている。


ヴィータ国王バイゲンはこれが喉から手が出るほど欲しい。


弓兵は歩兵であるため、射程はあるが、機動力に劣る。


湿原では機動力が落ち、必要とはされないのだが、それでも平地はそれなりにあるのだ。


積極的な攻撃部隊になれる弓騎兵という兵科の強化はヴィータ国にとっては嬉しい。


ゆえに、警備よりもそちらが本命である。


数日の旅を終え、王城に辿り着くと、政府高官が出迎えてくれる。


キミュケール達は荷物チェックを受け、装備品のリスト作成に協力する。


同国内とはいえ、ヴィータ国のこういったところは本当に厳しい。


弓兵主体ゆえに、接近を許すと終わりだ。


ましてや、弓兵の最大の難敵は騎兵である。


特に軽装騎兵の機動力で近づかれたら、弓兵隊は無力化する。


今回、警備を許されたのも、弓騎兵であって、軽装騎兵でないからともいえる。


槍などの長物の武器がないことをチェックするのはセキュリティを考えると当然といえよう。


なお、重装歩兵も弓兵に対しては強い。


投石、落石、弓矢の攻撃力よりも鎧兜、盾の防御力の方が高いからだ。


しかし、その重装備ゆえに動きが遅く、器用な攻撃ができない。


また、起伏や足場の悪い地形には向かない上に、総重量四十キログラムを超える装備では活動時間がえらく短いのだ。


一説によると、数十分から二時間が限界といわれる。


つまり、湿地を越えて、城下までたどり着けないのだ。


状況によって天敵の兵科は異なるということだ。

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