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カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第三部 ヴィータの滅亡と新たなる戦乱の兆し
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ヴィータ国

 時はやや遡る。


プルミエ国を出発したキミュケールはビーゼス国の主力部隊でもある弓騎兵を従え、ヴィータ国を目指す。


千もの弓騎兵を従えてプルミエ国を北上。


湿地帯を抜けて、最終的にヴィータの王城を目指すのだが、この国の特徴として、王城以外の大きな街や村がないというのがある。


もちろん、湿地帯付近は大陸の中でも屈指の穀倉地帯となっており、オージュス連合全体を養えるほどの豊饒な土地となっているため、農家は至る所に点在しているが、大規模な村というのはないのである。


山からの水源があり、それ以外の産業が発達してもおかしくないのだが、完全な農業国家である。


海には魔獣の存在で、港町としての機能はなく、わずかに漁業があるのみだ。


従って、海での交易も乏しい。


そして、森林も少ないため、採取による収穫も期待できない。


ただ、自国ではないが、ホルツホックの森近辺に出入りすることはあるため、木材の入手には事欠かない。


鉱山はないわけではないが、取れる鉱石は少なく、魔獣や北方異民族の脅威を考えると、釣り合わない。


したがって、湿地を生かした完全農業王国となっている。


この地形を生かし、弓兵が主力となっている。


湿地帯があるため、騎馬は足を取られ、歩兵ですら行軍が遅くなる。


そこを弓矢隊が待ち構え、足が止まった部隊を蜂の巣にするのだ。


戦争における死者の統計をみると、その多くは弓矢によるものである。


いかに弓兵が強いかということがわかる。


接近されると弱いということ、重装兵による防御で矢が利かない場合も厳しい。


したがって、ヴィータ国は鉱山資源に恵まれ、重装備を主とするウィッセン国を仮想敵として装備の研究をしているとも言われる。


鎧も貫く矢の開発は日夜続けられているという。


無論、同じオージュス連合国内のことであり、今までも細かい諍いがないわけではなかったが、本格的な侵攻などはなかった。


これは、共依存関係にあることが大きい。


オージュス連合国は各国で資源や兵科の特徴が顕著であり、単独で自給自足を賄える国は少ない。


食糧的にはヴィータ国とシーハーフ国だけであろう。


ただ、畜産はビーゼス国だったり、採取はプルミエ国だったりと、やはり特徴がある。


ヴィータ国に侵攻する際に、湿地が荒らされると、オージュス連合全体の食糧問題となるのだ。


言わば、穀倉地帯を戦場にした最強の人質作戦となる。


なお、穀物の栽培方法は国家機密とされ、許可を受けた農家が、王城の農業庁という役所から種苗の提供を受けて行なっている。


万一、穀倉地帯が制圧されることがあったとしても、王城に備蓄された兵糧と弓兵によって籠城されることで撤退を余儀なくされるということになる。


王城は城壁が高く、弓兵が多数配置できる構造になっており、難攻不落だが、城壁都市というわけではないため、城下町は平地に展開されている。

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