スパツェロ、目覚める
一方、布陣前、のぞみはスパツェロの元を朝美とともに訪れる。
目を覚ましたとの報告があったためだ。
「何とか生き延びてくれてよかったよ」
とのぞみは微笑む。
「すみません。油断したわけではないのですが、ドルディッヒ王の気迫に完全にやられてしまいました」
そういって苦笑いをするが、まだ完全に顔が真っ白である。
「まぁ、お前にしちゃあ上出来だ。お陰で七百近く損害を与えて大成功だ。こっちは十名くらいの被害だから、圧勝さ」
朝美は笑うと、
「ま、十名のうち、一名がお前だけどな!」
と言って笑う。
十名のうちの半数がスパツェロを守るために散っていったことを皆がわかっているが、そこには触れない。
本人が一番理解しているであろう。
「のぞみさん。生意気ですが、意見具申を・・・・・・」
そういって、スパツェロはのぞみの方を向く。
「ドルディッヒ王は短気で攻撃的、朝美さんのようなお方です。訓練でやった形がそのまま使えると思うんです」
「お前、やっぱ死んどくか?」
朝美は容赦なく頭を殴る。
「痛てっ。あ、すみません。でも、朝美さんとの訓練の後でのぞみさんと答え合わせをやったんです」
一度のぞみの方を見てから、朝美に向き直る。
「わざと中央に隙を作り、本陣を見せ、指揮官自体が囮になる。その後に両サイドから潰すようにして挟撃するというものです。鶴翼の陣の仕留め方に近い物ですが。幸いにして森に伏兵もおりますし、両サイドからの攻撃は可能。しかも、相手はきっと我々の陣形に合わせてくると思います。同じか有利な兵科をぶつけようと・・・・・・」
「ふーん、なるほど。お前、超絶馬鹿じゃなかったんだなぁ」
朝美が茶々をいれるが、多少は見直したようである。
「うん。言わんとしたことはボクは理解したよ。弔い合戦として、スパツェロさんの意見を作戦に組み込ませてもらうことにする」
のぞみは、もう休めと言わんばかりに布団をかけ直し、立ち上がる。
朝美もその姿を見て立ち上がり、病室を後にする。
天幕を出た後、朝美は聞こえないことを確認もせずに呟く。
「あいつ、超絶馬鹿じゃねぇけど、やっぱ馬鹿だな」
そういって、笑っている。




